ルネサス エレクトロニクスは、SiCパワー半導体の第2弾製品を発表した(ニュース・リリース)。約1年前に発表したSiCのショットキ・バリア・ダイオード(SiC-SBD)の「RJS6005TDPP」(Tech-On!関連記事)と、同社のSi製高耐圧トランジスタ(パワーMOS FETまたはIGBT)を1パッケージに封止した複合デバイスである。

今回の製品 ルネサスのデータ。
今回の製品
ルネサスのデータ。
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今回の複合デバイス(左)と、既存の単体デバイス(右) 複合デバイスは「RJQ6022DPM」で、IGBT(右側の大きなデバイス)2個とSiC\-SBD(右側の小さなデバイス)2個が収容されている。Tech\-On!が撮影。
今回の複合デバイス(左)と、既存の単体デバイス(右)
Tech-On!が撮影。
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今回の複合デバイスの応用例 エアコン向けのモーター駆動回路で、RJQ6020DPMまたはRJQ6021DPMでPFC(力率改善)回路を、RJQ6022DPMでインバータ回路を構成する。それぞれ制御には、同社のPFC制御ICや、MCU\+フォトカプラを使う。ルネサスのデータ。
今回の複合デバイスの応用例
エアコン向けのモーター駆動回路である。ルネサスのデータ。
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 「SiC-SBDを先行して発売したものの、期待されたほど数が出ていないという声を聞く」(同社 マーケティング本部 汎用システム統括部 汎用システム技術部 担当部長の金澤孝光氏)。単体デバイスで評価をすればSi製に比べてSiC製は特性が優れていることは確認できても、機器で使うためには他のデバイスと組み合わせて回路を組む必要がある。

 「これまで使ったことのないデバイスと相性の良いデバイスを見つけるのは簡単ではない。その作業の負荷を大幅に軽減したのが、今回の複合デバイスである」(同氏)。全部で3品種の複合デバイスを、今回、SiCパワー半導体の第2弾製品として発表した。

 いずれも、同社のSiC-SBD(約1年前に発表したRJS6005TDPP。東日本大震災の影響で予定より製造スケジュールが遅れ、最近、量産が始まった)と同社のSi製高耐圧トランジスタ(パワーMOS FETまたはIGBT)を組み合わせて1パッケージに収めており、1パッケージでハーフブリッジ回路になっている。パッケージはTO-3Pと同じ外形だが、端子は5ピンある(実装面積は16mm×40mm)。複数のデバイスを収めたことで、小スペース化や信頼性向上が図れるとする。

 ルネサスによれば、SiC-SBDと高耐圧トランジスタを1パッケージに収めた複合デバイスは、今回が初めてだという。「特性の良い高耐圧トランジスタとSiC-SBDの両方を持っている半導体メーカーは少ない。双方を持っているルネサスだからこそ、業界に先駆けて複合デバイスを開発できた」(同氏)とする。既存の高耐圧トランジスタを最適化した上で、SiC-SBDと一緒にして1パッケージに収めた。

 さらに、今回の複合デバイスに、同社のマイコン(MCU)や各種制御ICなどを組み合わせることで、容易に電源回路やインバータ回路を構成できるという。エアコンなど、特定の機器に向けたこうした回路の評価ボード(開発キット)を、ルネサスは用意していく。

■変更履歴
この記事の掲載当初、このページで、次のような誤りがありました。第2段落(要点を含む)で、金澤孝光氏の役職が「担当課長」となっていたのは「担当部長」の誤り。第4段落でSiC-SBDに関して「最近、サンプル出荷が始まった」となっていたのは「最近、量産が始まった」の誤り。同じ段落で、「実装面積は16?×40?」となっていたのは、「実装面積は16mm×40mm」の誤りでした。以上、お詫びして訂正します。本文は修正済みです。