いつでも好きな場所に行ける快適な移動手段として発展を遂げてきたクルマ。しかし今回の大震災では、クルマを非常用の発電装置や蓄電装置として活用する事例が相次いだ。クルマが新たな「電源」として、将来の社会インフラに組み込まれる可能性はあるのか。エネルギー源としてのクルマについて全3回で考察する本連載の最終回(今回)では、前回に続いて自動車メーカーの試みについてお伝えする(第1回第2回)。

 電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の蓄電池(バッテリー)を災害時や停電時の非常電源に利用するだけでなく、夏場などの電力不足の際に車両のバッテリーから電力を家庭に一部供給し、商用電源の電力ピークを抑制することが可能な「V2G(Vehicle to Grid)」を活用する機運が震災後、高まっている。

 前回、トヨタ自動車や日産自動車が経済産業省のプロジェクトで実証試験を計画していることを紹介したが、ホンダも今後の電動車両の開発にV2Hの思想を取り入れることを同社 代表取締役社長の伊東孝紳氏が2011年5月23日に表明している。さいたま市が進めている「スマートハウス」と電動車両と組み合わせ、エネルギーを効率的に利用する実証実験「E-KIZUNA Project(イー・キズナ・プロジェクト)」の記者発表会で述べたもので、これで国内の大手自動車メーカー3社がそろってV2Hへの積極的な姿勢を打ち出したことになる。

「E-KIZUNA Project」を進めることで合意したホンダ 代表取締役社長の伊東孝紳氏(左)とさいたま市長の清水勇人氏(右)。