伊仏合弁のSTMicroelectronics社は,スイスST-Ericsson社と共同で開発した携帯機器向けデジタル・インタフェース規格「Mobility DisplayPort(以下,MYDP)」を発表した(発表資料)。同規格は,パソコンやモニターなどを中心に採用例が増えつつあるデジタル・インタフェース規格「DisplayPort」をベースにしたもの。MYDPは,DisplayPortとプロトコル互換性があるとする。STMicroelectronics社は,既にDisplayPortの携帯機器での利用を想定した伝送技術を開発済み(Tech-On!関連記事1)。同技術をMYDPという標準規格にするために,ディスプレイ関連の規格策定などを行う業界団体「VESA(Video Electronics Standards Association)」に提案中。2011年中ごろまでにVESAからの承認を得ることを目標とする。

 MYDPは,1080p,60フレーム/秒のHD動画を非圧縮で伝送しつつ,給電が可能である。例えば,MYDPに対応したスマートフォンと,DisplayPort端子を備えたモニターと接続して利用する。現状では,最大1.5Wを給電できる。これを2.25Wにまで引き上げる案もあるという。

  MYDPでは,固有のコネクタ仕様が規定されておらず,他の規格のコネクタを共用できるのが特徴である。ただし,MYDPでは映像伝送と給電などのために少なくとも5端子が必要になる。5端子のうち,2端子を映像信号の差動伝送に利用する。給電用に1端子,グラウンド(GND)用に1端子用いる。そして残る1端子で,DisplayPortの補助チャネル「AUX」のデータ送受信と,ホット・プラグ・ディテクト(HPD)を行う。

 MYDPが共用コネクタとして想定しているのが,携帯電話機で一般的なmicroUSBコネクタである。 microUSBのコネクタを共用できることや給電能力を備えることなど,米Silicon Image社や携帯電話機メーカーが主導するデジタル・インタフェース「MHL」に類似する(Tech-On!関連記事2)。最近ではHDMIのマイクロ仕様に位置付けられる「Type D」が,携帯電話機やコンパクト型のデジタル・カメラなどで採用され始めている(同3)。HDMIにMHL,そしてMYDPなど,携帯機器における映像伝送用デジタル・インタフェース規格の主役争いは今後,さらに激しくなりそうだ(日経エレクトロニクス関連別冊)。