図1 「SP2531」を使った単体モデムの参照設計
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図2 SP2531の構成
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図3 SP2531の機能
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図4 ルネサス モバイルのLTE対応モデム用チップセットのロードマップ
図4 ルネサス モバイルのLTE対応モデム用チップセットのロードマップ
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図5 SP2531の構成品(図:ルネサス エレクトロニクス)
図5 SP2531の構成品(図:ルネサス エレクトロニクス)
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 ルネサス モバイルは2011年2月8日,移動通信方式としてLTEとW-CDMA,GSMの3種類に対応するモデム用チップセット「SP2531」を発表した(発表資料)。デジタル・ベースバンド処理LSI,RFトランシーバIC,電源IC,パワー・アンプと,関連ソフトウエアをセットで提供する。2011年3月にサンプル出荷を開始し,2011年末に量産を開始する。既にフィンランドNokia Corp.から受注を獲得している。

 ルネサス モバイルは,ルネサス エレクトロニクスがNokia社から買収したワイヤレス・モデム事業(Tech-On!の関連記事1)と,携帯機器やカーナビ向けSoCを手がけるルネサス エレクトロニクスのモバイル・マルチメディア事業を承継する新会社である(同関連記事2)。2010年12月1日に営業を開始した(同社の営業開始に関する発表資料)。今回の発表品が,ルネサス モバイルとしての第1弾製品となる。

 SP2531を構成するベースバンド処理LSI,RFトランシーバIC,電源ICはいずれも新規に開発した。

 ベースバンド処理LSIは,Nokia社のワイヤレス・モデム事業の買収によって提供可能になった。今回の製品は,LTE(下り最大100Mビット/秒,上り最大50Mビット/秒のカテゴリ3),W-CDMA(下り最大42Mビット/秒のDC-HSPAまで),そしてGSMに対応する。各方式のプロトコル・スタックやハンドオーバー機能などの
ベースバンド処理LSI用ソフトウエアと合わせて提供する。このLSIのパッケージ寸法は8mm×8mm。45nm世代の技術で製造する。

 同様にLTEとW-CDMA,GSMに対応するRFトランシーバICは,700M~2.7GHzの範囲にある各種の周波数帯域に対応する。GSM用の4バンドと,W-CDMAおよびLTE用の7バンドを利用できる。65nm世代のCMOS技術で製造し,パッケージ寸法は7mm×7mmである。

 W-CDMAおよびLTEに7バンドを利用する場合,パワー・アンプ・モジュールは3個必要になる。SP2531を使ってモデム機能を構成した参照デザインでは,SIMカード・スロットなどを含めた実装面積が900mm2になるという。電源ICのパッケージ寸法は3.5mm×3.5mmである。

 SP2531は,単体のモデム製品と,スマートフォンなどの携帯機器への採用を想定して開発したものである。外部インタフェースとしてUSB 2.0およびMIPI HSI v1.1に対応しており,単体モデムとして利用する場合はUSB,携帯機器に内蔵する場合はUSBまたはMIPIで接続する。

 ルネサス モバイルは2011年末から,月産100万セット規模で量産を開始する予定である。SP2531と同時期に,LTE対応機能を省略したデュアル・モード版のチップセットも製品化する計画だ。その後,アプリケーション・プロセサとベースバンド処理LSIを統合した派生品を,「R-mobile U」シリーズとして提供する予定である。また,TDD(時分割多重)モードのLTE(TD-LTE)とTD-SCDMAに対応するモデム用チップセットの提供も計画する。

 同社は2011年2月14~17日にスペイン・バルセロナで開催される「Mobile World Congress 2011」のフィンランドNokia Siemens Networks社ブースで,SP2531を使ってLTEで通信する様子を見せる予定である。