図1 Move(写真:SCE)
図1 Move(写真:SCE)
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図2 Eye(写真:SCE)
図2 Eye(写真:SCE)
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図3 左手にナビゲーションコントローラ,右手にMoveを持った場合(写真:SCE)
図3 左手にナビゲーションコントローラ,右手にMoveを持った場合(写真:SCE)
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図4 Moveをペンに見立て,画面上に文字を描くデモ。テレビの映像をプロジェクターで投影し,会場の報道陣に披露している。
図4 Moveをペンに見立て,画面上に文字を描くデモ。テレビの映像をプロジェクターで投影し,会場の報道陣に披露している。
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図5 Moveをラケットに見立てたデモ。Moveを持って実演しているのは,SCEの宮崎氏
図5 Moveをラケットに見立てたデモ。Moveを持って実演しているのは,SCEの宮崎氏
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図6 Moveを剣に見立てたデモ
図6 Moveを剣に見立てたデモ
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 ソニー・コンピューターエンタテインメント(SCE)は,プレイステーション3(PS3)向けジェスチャー入力コントローラ「PlayStation Moveモーションコントローラ」の発売に先立ち,2010年9月3日,報道機関向けにMoveの体験会と説明会を開催した(Tech-On!関連記事1同2)。SCEは説明会の場で,「Moveを第二の標準コントローラにする」(同社)と意気込んだ。ジェスチャー入力という,実空間での動きに近い動作で操作を可能にすることで,普段はあまりゲームをしない,いわゆる「カジュアル・ゲーマー」を取り込む考えだ。これにより,PS3ユーザーの拡大を図る。

 Moveは,棒状のコントローラで,PS3用のカメラ「PlayStation Eye」と組み合わせてジェスチャー入力を実現している(図1,2)。ユーザーがMoveを手に持ち,Eyeの前で動くことでゲームを操作できる。Moveは,3軸加速度センサと3軸ジャイロ・センサ,そして3軸地磁気センサを内蔵する。これらのセンサが検出したデータに加えて,Eyeで,Move先端の球状の物体を検知したり,ユーザーの顔面の映像をトラッキングしたりする。こうした結果なども含めて演算し,ユーザーの動きや姿勢を検知する。Moveの先端部はさまざまな色で発光する。周囲の色に合わせて先端部の色を変化させられるので,どんな環境下でも先端部をカメラで正しく検知できる。

 説明会では,Move開発者が登壇し,開発の狙いや背景,実現する上で苦労した点などを解説した。Moveはそもそも,研究所で開発されていたもの。2008年夏ごろから商品化に向け,本格的な開発に乗り出したという。

 Moveを開発する上で,重視したのは,高い精度と信頼性を両立させることやリアルタイム性を確保することなどである。例えば精度に関しては,どんな条件下でもなるべくユーザーの動きすべてを取り込むことを目指した。リアルタイム性に関しては,「ユーザーの感覚をダイレクトに反映させることを目指した」(SCE 第二事業部 設計部5課 課長の宮崎 良雄氏)という。応答速度は,既存のPS3用ワイヤレス・コントローラ「DUALSHOCK 3」と同じだとする。
 

ボタン配置にこだわる


Moveでは,ボタンの配置にもこだわった。DUALSHOCK 3を含め,従来のプレイステーション・シリーズのコントローラでは,「○」「×」「△」「□」の4種類のボタンをダイヤモンド型(ひし形)に配置していた。Moveでは,中央に大型ボタンを配置し,その両側に前述した4種類のボタンを2種類ずつ配置する(前出の図1参照)。左側に,□と×ボタンを,右に△と○ボタンを配置する。さまざまなゲームでMoveを使えるようにするためである。

 また,中央に大型ボタンを配置したのは,カジュアル・ゲーマーを取り込むためだ。「カジュアル・ゲーマーの方にとっては,4種類のボタンも複雑に見える場合がある」(宮崎氏)からだ。

 ただし,あまりカジュアル・ゲーマー向きにすると,ゲームで頻繁に遊ぶコア・ユーザーから,より複雑な操作を求められる可能性がある。そこで,Moveに小型のコントローラ「PlayStation Moveナビゲーションコントローラ」を接続することで,より細かな操作をできるようにした(図3)。

 Move先端にある球体にもこだわったという。例えば,継ぎ目や色ムラが見えないようにした。また球体全体をやわらくかくし,先端部が何かにぶつかっても物体などを傷つけないように細心の注意を払っている。

実物に見立てる


 Moveを使い,直感的な操作を実現する上で重要なのが実物の道具に「見立てる」ことである。ペンやライト,虫取りあみ,バット,ラケット,拳銃などだ。会場では,Moveをラケットや剣に見立てた場合のデモを披露した(図4,5,6)。そのリアルな動きに,会場はざわめいた。

 ただし,どのようなものでも「見立て」に向くわけではない。SCEによれば,スコップやムチ,うちわなど検討したが,ゲーム化には至らなかったという。

3D立体映像と組み合わせる


SCEは,MoveをPS3用ゲームの操作に利用するだけでなく,さまざまな用途へ広げる考えを持つ。。実際,3D立体映像とMoveを組み合わせることで,3D空間で触ることを実験しているという。こうした研究は,ソニーと協力しながら進めているという。このほか,PS3用カメラEyeを利用した,ヘッド・トラッキングや表情認識,音声認識といった認識技術を,さまざまな用途に生かしたいとする。

 なお,Moveやその関連製品の発売は,日本では2010年10月21日である。