NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏(左)と,大日本印刷 代表取締役副社長の高波光一氏(右)
NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏(左)と,大日本印刷 代表取締役副社長の高波光一氏(右)
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 NTTドコモと大日本印刷は,電子出版事業で提携すると発表した。両社で電子書店を開設し,2010年秋のサービス開始を目指す。

 両社は,電子書店を運営するための事業会社を設立する。事業会社には,2社以外の出資の可能性もあるとしており,現時点では出資比率などは未定である。

 事業会社が運営する電子書店は,多くの出版社や端末メーカーに対して「オープン」(NTTドコモと大日本印刷)なものにするという。今回の発表に対して,出版社としては講談社と小学館,端末メーカーとしてはNECとLG Electronics Japan,サムスン電子から賛同を得ていることを明らかにした。

ケータイのビジネスモデルを踏襲

 サービス開始当初のビジネスモデルは,携帯電話におけるモデルに極めて近そうだ。「当初,電子書店に対応する端末は,NTTドコモの回線につながる端末のみ」(NTTドコモ 代表取締役副社長の辻村清行氏)としており,「Xperia」など既存の端末に加え,2010年秋以降に同社が発売予定のスマートフォンなど7機種が対応することになるという。7機種のうち1機種は,電子書籍専用端末だとする。

 さらに課金決済システムも,NTTドコモの携帯電話用プラットフォームを利用することになるという。出版社に対する課金手数料は,現時点では決めていないとするが,「Apple社が実施している30%という手数料は高いと思う」(NTTドコモの辻村氏)とした。

 一方,大日本印刷にとっては,書籍のデジタル化など,出版社との間でのビジネスモデルが主になりそうだ。電子書店における書籍の売り上げなどは,今回設立する事業会社の収益となる。

通信料金を意識させないモデルを検討

 NTTドコモは,今回のビジネスモデルにおいて,米Amazon.com,Inc.の「Kindle」と同様な通信料金設定を考えていることを明らかにした。すなわち,ユーザーはコンテンツをダウンロードするための通信料金を支払う必要がないというモデルである。「この点は,ユーザーにとっての利便性を考えると,非常に大事な点。実現には,解決すべきことが多いが,重要事項として検討しているのは事実だ」(NTTドコモの辻村氏)。

「電子書店は一つである必要はない」

 今回のNTTドコモと大日本印刷の提携は,2010年5月にKDDIと凸版印刷がソニーや朝日新聞社と電子書籍の事業企画会社を設立(Tech-On!関連記事)したことへの対抗策と見ることもできる。

 NTTドコモの辻村氏は,「電子出版は黎明期。日本に電子書店が一つだけである必要はなく,今後も手を挙げるところが出てくるだろう。ただし,いずれは集約されていくのではないか」とした。

 辻村氏は,「3兆~4兆円とされる国内出版市場のうち,5年後ぐらいには2~3割がデジタルに移行するのではないか」と見る。この中で一定のシェアを獲得すれば,数100億円の事業規模になると踏む。「ケータイの雄として,電子出版でもシェア1位を狙う」(辻村氏)とした。