4社の代表者。左から,朝日新聞社 デジタルビジネス担当の和気靖氏,凸版印刷 取締役 経営企画本部長の前田幸夫氏,米Sony Electronics社 Deputy President,Digital Reading Business Divisionの野口不二夫氏,KDDI 取締役 執行役員常務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏
4社の代表者。左から,朝日新聞社 デジタルビジネス担当の和気靖氏,凸版印刷 取締役 経営企画本部長の前田幸夫氏,米Sony Electronics社 Deputy President,Digital Reading Business Divisionの野口不二夫氏,KDDI 取締役 執行役員常務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏
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オープンを標榜
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日本市場に合った電子書籍ビジネスを展開すると主張
日本市場に合った電子書籍ビジネスを展開すると主張
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 ソニー,凸版印刷,KDDI,朝日新聞社の4社は,電子書籍配信事業に関する事業企画会社を設立する。2010年5月27日に4社合同で記者会見を開催して発表した。

 事業企画会社は2010年7月1日をメドに設立。書籍・コミック・雑誌・新聞などのコンテンツの共通配信プラットフォームを構築・運営する事業会社に移行させ,2010年内にサービスを開始する予定である。事業企画会社の代表取締役には,エンタテインメント系コンテンツ配信事業を展開するレコチョク取締役 代表執行役社長の今野敏博氏が就く。

 事業企画会社は4社が25%ずつ出資(資本金1500万円,資本準備金1500万円)して設立するが,事業会社への移行に際し,4社以外にも広く参加を呼び掛ける考え。「今回の事業企画会社の設立には間に合わなかったが,既に,さまざまな企業と前向きな話を進めている」(米Sony Electronics社 Deputy President,Digital Reading Business Divisionの野口不二夫氏)という。日本電子書籍出版協会の代表理事を務める講談社 代表取締役副社長の野間省伸氏(Tech-On!関連記事)のほか,小学館,集英社,文藝春秋などの出版社から,今回の事業に対する賛同を受けているとした。

「オープン」を標榜

 今回の事業が目指すのは,「日本の市場に合った電子書籍ビジネス」(Sony Electronics社の野口氏)である。その姿として,オープンな配信プラットフォームであることを掲げる。具体的には,コンテンツを提供する出版社も,コンテンツを読むための端末についても,「誰もが安心して参加できる環境を整備する」(同氏)という。

 ソニーが現在,米国を中心に展開している電子書籍事業では,ファイル・フォーマットに「EPUB」,DRMに「ACS4(Adobe Content Server 4)」を採用する。このフォーマットとDRMはオープンな業界標準として広く使われていることから,米Amazon.com,Inc.が独自のフォーマットとDRMを利用して展開する「Kindle」の事業に対して「オープン」であることを標榜している。ただし,今回の配信プラットフォームが掲げる「オープン」は,前述の「誰でも参加できる」ことを指しており,フォーマットやDRMにオープンなものを採用するという意味ではない。

 今回のプラットフォームにおけるコンテンツのフォーマットやDRMについては,「一つに決める必要はなく,幾つかあっても良い」(Sony Electronics社の野口氏)という見解を示した。また,このプラットフォーム上では,ユーザーに対して複数のコンテンツ・ストア(電子書店)を用意できる仕組みになるという。

 今回の配信プラットフォームに対応する端末として,ソニーは年内に電子書籍専用端末を発売する(Tech-On!関連記事)ほか,KDDIも「スマートフォンのほか,専用端末の開発に取り組む」(同社 取締役 執行役員常務 グループ戦略統括本部長の高橋誠氏)という。こうした専用端末のほかにも,タブレット端末やスマートフォンなど多くの端末に配信したい考えだ。

 米Apple Inc.の「iPad」や「iPhone」への対応に対しても,決して否定はしなかった。「App Storeにアプリを提供することも考えられなくはない」(Sony Electronics社の野口氏)。

 ただし,わざわざiPadの国内発売前日に記者会見を実施した背景には,Apple社への対抗の意識も当然あるだろう。iPad向けに国内でもいずれ用意される「iBook Store」の対抗軸となり得る,「もう一つの」電子書籍配信プラットフォームの存在を,出版社やユーザーなどに対して強く印象付ける狙いがありそうだ。

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