家電・PC分野の2009年のランキング上位は,日経エレクトロニクス編集部が手掛けた製品分解記事が上位を独占した。トップ10のうち,なんと9本が分解記事だったのである。
▼ 2009年「家電・PC」記事ランキング
分解記事では,ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が9月に発売した新型PS3の記事がトップテンに5本入ったが,首位を獲得したのはダイナコネクティブという無名のメーカーが手掛けた激安テレビの記事だった。この事実は,2009年の新製品が全体的に小粒で,デジタル家電の新機軸を象徴するような製品が登場しなかったことを反映している。
ダイナコネクティブが手掛けた32型の液晶テレビ「DY-32SDDB」は,DVDプレーヤーを内蔵しながら4万9800円という激安価格が大きな話題を呼んだ。流通大手のイオンが1万5000台限定で販売したところ,数日間で完売したという。その安さの秘密を,分解を通じて分析しようというのが今回の記事の試みだった。分解の結果,比較対象としたソニーの液晶テレビと比べ,かなりの「やっつけ仕事」であることが判明したが,それでもこの価格設定や多くの消費者が飛びついた事実は,国内大手メーカーの技術者に脅威を感じさせた。
新製品が全体的に小粒のなかで,大きな注目を集めたのがSCEのPS3だろう。3代目に当たる「CECH-2000A」は,従来機と比較して大幅な小型化,低消費電力化を実現した。心臓部のマイクロプロセサ「Cell Broadband Engine」を,従来の65nmプロセス品から45nmプロセス品に切り替えるなどして,小型化,低消費電力化を実現した。こうした国内メーカーが得意とする要素技術を解説した記事が,高い関心を集めた。
2009年のデジタル家電分野の記事で,唯一,速報記事としてベストテンに食い込んだのが,ソニーが3月にカメラの展示会「PMA」で発表した,新型コンパクト機「DSC-HX1」に関する記事である。このカメラは,高速連写機能を使って驚くほど簡単にパノラマ写真を撮影できるのが特徴。被写体にカメラを向けてシャッターを切り,カメラを横に振るだけである。市場の飽和に直面する,デジタル・カメラの新しい撮影法を提案した点が高い評価を受けた。