パーティーで挨拶するセレボの岩佐社長
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会場に準備した試用機
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写真管理サービス「CEREVO LIFE」のデモ
写真管理サービス「CEREVO LIFE」のデモ
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セレボのWebサイトで商品の説明動画に出演するアイドルグループ「バニラビーンズ」も登場
セレボのWebサイトで商品の説明動画に出演するアイドルグループ「バニラビーンズ」も登場
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無線LAN関連製品を開発するプラネックスは,12月中旬以降に発表予定の無線LANルータを会場内で展示した。デジタルフォトフレーム機能を備え,「CEREVO CAM」と連携する仕組みを用意する
無線LAN関連製品を開発するプラネックスは,12月中旬以降に発表予定の無線LANルータを会場内で展示した。デジタルフォトフレーム機能を備え,「CEREVO CAM」と連携する仕組みを用意する
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 「たった今,商品が届きました。ぜひ,触っていただければと思います」

 2009年12月10日の夜。インターネット家電の企画・開発を手掛けるベンチャー企業,Cerevo(セレボ)の岩佐琢磨社長は,パーティー会場に集まった100人前後のブロガーや報道関係者に語りかけた。(関連記事1

 パーティーは,同社が第一弾の商品として投入するデジタル・カメラ「CEREVO CAM」の発売を記念して開催したもの。自社サイトをはじめ,楽天やアマゾンなどのインターネット通販限定で,1万9999円で販売する。既に予約を受け付けており,同14日の週から出荷が始まる予定だ。

 実は,この日のパーティでお披露目した商品は,生産委託する中国の工場から開始時刻ぎりぎりに会場に運び込まれた。

 岩佐社長は「現地から社員が運んできた方が宅配便よりも早かった」と舞台裏のドタバタに苦笑しながら,「本来ならば,余裕をもって用意しておくべきでした」と反省の弁を述べた。

 パーティ会場では参加者が自由に使える試用機を用意した。撮影した写真を会場内の無線LANアクセスポイント経由で同社の写真管理サービス「CEREVO LIFE」に自動で転送。その写真を会場内の大画面モニターに映し出す趣向のデモを見せた。

2次元バーコードで無線LANの接続を設定

 CEREVO CAMは,内蔵したIEEE 802.11n/b/g対応の無線LANを使って,カメラをカバンやポケットに入れたままでも,写真管理サービスに自動でアップロードする機能を備えている。電源を切っていても,あらかじめ設定したアクセスポイント付近にユーザーがいる可能性の高い時間帯に無線LAN機能を起動。自宅や外出先でインターネットのアクセスポイントを探し出して,撮影した写真を管理サービス側に投稿する。(関連記事2関連記事3

 無線LANアクセスポイントへの接続設定を簡略化する仕組みも導入した。

 まず,写真管理サービスの設定画面でアクセスポイントのIDとパスワードを入力。すると,2次元バーコードが生成され,パソコンの画面上に表示される。それをCEREVO CAMで撮影するとカメラが接続の設定情報を認識し,自動で設定を完了する仕組みだ。

 写真管理サービスの保存容量の上限は5Gバイトで,カメラの価格に含まれる。Webサーバーや顧客管理,ストレージ管理といったシステムを自社の手作りで構築することで運用コストを下げた。インターネット業界のスタートアップ企業では,同様の“手作りサーバー”でサービスを立ち上げる例は増えており,そのノウハウをインターネット家電向けのサービスに取り入れた。

 「ハードウエア開発と,インターネット業界のサーバー運用のノウハウを組み合わせた。自作することで,運用コストを削減できるだけでなく,利用者が増えたときにサーバーの能力を増強するタイミングを見極めやすい利点がある。カメラ向けのWebサービスを写真管理に特化することでコンパクトな仕様を実現した」(岩佐社長)。

充電時期などを電子メールで知らせる

 仕様はコンパクトでも,ユーザーのかゆいところに手が届く仕掛けを写真管理サービスに盛り込んだ。

 例えば,2次電池の残容量をユーザーにメールで知らせる仕組みである。カメラから同社の写真管理サービスに写真をアップロードする際に,2次電池の残容量情報を一緒にサービス側に送信する。電池の残り容量が特定の数値以下になると,予め登録しておいた電子メールアドレスにメールを送る。「そろそろ充電しよう」とユーザーに気付かせる仕掛けだ。

 電子メールは,写真の転送終了を知らせる仕組みにも活用した。例えば,写真管理サービスへの自動アップロードが終了した後や,写真管理サービスから「Flickr」「Picasa」といった他社の写真共有サービスに転送した後にも登録アドレスに電子メールが届く。Webサービス間で数十枚規模の写真を送ろうとすると,サーバー間の転送に時間がかかる可能性がある。転送中にユーザーが別の作業をしたり,パソコンの前から離れていたりしても,メールが届けば転送終了に気付けるというわけだ。

 第3世代携帯電話のデータ通信端末をUSBポートに接続することで,無線LAN環境がなくても写真をアップロードできる。まずは,イーモバイルの端末に対応した。

 「あれもやりたい,これもやりたいと思うことは残っているが,商品として顧客に届けられる完成度は十分に実現できた。ゼロから今回の製品を完成させたことで,だいぶ開発ノウハウを蓄積できた」

 岩佐社長は自信を見せる。既に第2弾の商品企画は始まっているという。オンラインでの販売,そしてインターネットのソーシャル・メディアを中心としたマーケティング戦略で,“家電”がどれだけのユーザーを獲得できるか。セレボの挑戦は,その意味でも注目する価値がありそうだ。