図1 米Pure Digital Technologies社の「Flip Video Ultra」
図1 米Pure Digital Technologies社の「Flip Video Ultra」 (画像のクリックで拡大)
図2 米Chumby Industries社のウィジェット表示装置「chumby」
図2 米Chumby Industries社のウィジェット表示装置「chumby」 (画像のクリックで拡大)

 米国のベンチャー企業が,インターネットとの連携を前提とする「ネット家電」を市場で成功させ始めた。撮影した動画をYouTubeにアップロードできる小型のビデオカメラ「Flip Video」や,インターネットで配信されているニュースや天気予報,写真などをユーザーがカスタマイズして表示できるウィジェット表示装置「chumby」などが代表例である。いずれも単純明快なコンセプト,シンプルで使いやすい操作性,そして低価格をウリに注目を集めている。

 民生エレクトロニクス製品を手掛けるベンチャー企業は一般に,ソフトウエアやサービスを提供するベンチャー企業に比べ,立ち上げに必要な資金が1ケタ以上大きくなるため,米国でも成功が難しいとされてきた。日本ではさらに難しい。ベンチャー向け資金の供給が限られるうえ,優秀な組み込みソフトウエア技術者が大手企業に囲い込まれており,採用が難しい(Tech-On!関連記事)からだ。

 2008年5月末に本格始動したCerevo(セレボ,旧社名はYOMEI)は,こうした困難を乗り越え,日本でネット家電を手がけようとするベンチャー企業である。同社の代表取締役は,人気ブログ「キャズムを超えろ!」を執筆するブロガー「和蓮和尚」としても知られる岩佐琢磨氏である。同社が第1弾製品として開発中の"ネット・デジカメ"や国内で民生エレクトロニクス・ベンチャーを手掛ける難しさについて聞いた。(聞き手=浅川直輝)


図3 Cerevo 代表取締役の岩佐琢磨氏
図3 Cerevo 代表取締役の岩佐琢磨氏 (画像のクリックで拡大)

——開発中の"ネット・デジカメ"のコンセプトを教えてください。

岩佐氏 Webとの連携です。このカメラは撮影した写真すべてを,無線LANを経由してサーバーに転送してしまう。写真の分類や編集はすべてWeb上で行います。

 ユーザーは,写真をパソコンにいちいち転送する手間が省けるうえに,HDDが壊れてデータを失うリスクを回避できます。サーバーに保存した写真は,簡単な操作でブログや(mixiなどの)SNSに転送できます。

——無線LANでWebサーバーに写真を転送できるカメラとしては,ニコンの「COOLPIX S7c」や松下電器産業の「DMC-TZ50」があります。これらの機器との違いは何でしょうか。

岩佐氏 根本的な違いは,このWeb連携機能が「オマケ」ではなく,我々のカメラの「本質」であることです。カメラの仕様やGUIは,我々のWebサービスとの連携を前提に設計しています。Apple社のiPodが,iTunesというソフトウエアとの連携を前提としているのと同じですよ。

 Web連携機能が「オマケ」か「本質」かは,機器の使い勝手,ユーザー・エクスペリエンスに大きな影響を与えます。例えば我々のカメラはすべての写真を自動でサーバーに送りますから,転送する写真をユーザーに選ばせる手間を強いません。中途半端な画像編集機能をカメラに載せるのではなく,Web側に持たせます。