後で付けたと見られる,Ethernetのコネクタ。この部品だけ穴を貫通してハンダ付けしているという。
後で付けたと見られる,Ethernetのコネクタ。この部品だけ穴を貫通してハンダ付けしているという。
[画像のクリックで拡大表示]
3Gモジュールを装着したネットワーク部の基板。Qualcomm社の「Gobi2000」を採用した。
3Gモジュールを装着したネットワーク部の基板。Qualcomm社の「Gobi2000」を採用した。
[画像のクリックで拡大表示]
VAIO Xのメイン基板に装着されていた貫通型のコンデンサ。マイクロプロセサの周りに配置されている。
VAIO Xのメイン基板に装着されていた貫通型のコンデンサ。マイクロプロセサの周りに配置されている。
[画像のクリックで拡大表示]
樹脂でシールドされたフェライト系のインダクタ。パソコンでは,シールド性能の高い巻線型のシールドを施したインダクタを使うのが一般的という。
樹脂でシールドされたフェライト系のインダクタ。パソコンでは,シールド性能の高い巻線型のシールドを施したインダクタを使うのが一般的という。
[画像のクリックで拡大表示]
ディスプレイ部の背面パネル。上部左のアンテナが無線LAN,上部右のアンテナが3G。右下のアンテナはBluetoothである。
ディスプレイ部の背面パネル。上部左のアンテナが無線LAN,上部右のアンテナが3G。右下のアンテナはBluetoothである。
[画像のクリックで拡大表示]

 VAIO Xの基板は,メイン基板とSSD,ネットワーク部,タッチパッド部に大きく分かれている。一通りバラしたときに,「芸が細かいねぇ」「こだわってるよ。設計のやりがいがある装置だね。さまざまな部品を専用で起こして,ここまでこだわらせてくれる」と技術者は語りあった。

 ネットワーク部でまず技術者が注目したのが,専用のVGAコネクタ。「これ,手付けだよな」(技術者)。ハンダのフィレットの位置から,全部機械付けではなく,これだけ後工程で足しているのが分かるという。

 次に着目したのが3Gモジュールである。3Gモジュールには米Qualcomm社の「Gobi 2000」の文字が。「おそらく,Gobi2000を採用したパソコンはこれが初めてだろう」(技術者)。Gobi2000の特徴はGPS機能を一体化している点にある。実際,WiMAX搭載機だと,3GとGPS機能がトレードオフになっている。Gobi2000がGPS機能も担っていることが分かる。逆に言えば,GPS機能を追加するためにGobi2000を採用したと見るべきだろう。

片面実装にするため部品を絞り込む

 メイン基板では「なんといっても片面実装にしたところがすごい。パターンの引き回しから何から,両面の方が楽。それだけ基板上の部品を少なくしなければならない」(技術者)。

 その一つの方策として,コンデンサ数を減らす努力をしたことが見受けられる。「パソコンのメイン基板としては,チップ・コンデンサの数が少ない。貫通型のコンデンサを多用したり,インダクタンスの小さいポリマ型のコンデンサを使うことによって,必要とする数を減らしているようだ」(技術者)。

 また,フェライト系のインダクタとして,樹脂でシールドした品種をいくつか使っている。「パソコンでこの種の部品を使っているのは初めて見た」(技術者)。磁性材料でシールドする品種に比べ小型で,その分基板を小さくできるメリットがある。

ソニーの本気を見た

 ディスプレイ部を分解すると,アンテナを張り付けた背面パネルと液晶パネルに分かれた。「おお。ペラペラだ」(技術者)。液晶パネルは東芝モバイルディスプレイ製のようだ。「ディスプレイ部の作りは,今までと変わっていない。ただし薄いは薄い。ウチが使っているものより薄いように思う」(技術者)。

 その一つの理由が,背面パネルの薄さだ。材料を薄くすること自体も難しいが,ある程度以下の薄さにしてしまうと難燃性が保てなくなる懸念があるという。「同じ製品をできれば海外でも売りたい。その際に難燃性の確保ができないと海外で売るのが法的に厳しくなる。もちろんそのあたりには配慮しているのだろう」(技術者)。

 液晶パネルもかなり薄くしている。「0.37mm厚のガラスを研磨して0.21mmくらいまで薄くしている。当社でも0.21mm厚を実現しているが,もう少し削っている感じがする」(技術者)という。

 ただ,ここまでディスプレイ部を薄くすることはあまりないという。「普通はここまでは頑張らない。ディスプレイ部を薄くしても,トータルの厚さはあまり変わらないからだ。キーボードの高さである程度吸収できてしまうので,そちらを頑張るのが一般的なやり方」(技術者)だからだ。

 全体的に見て,VAIO Xには設計者のこだわりが至る所に感じられるという。「結構これ,ソニーが本気を見せたという感じだね。こんな設計者と一杯飲みたい。きっと意気投合できるような気がする」(技術者)。採用している部品にしても,今想定し得るコネクタなどの集大成であるという。例えばMacBook Airのように,一度分解したら再度組み立てることが困難な設計を採用すれば,もっと簡単にできる。これに対して,セオリーを守りつつ,薄くしたことにソニーの気合いを感じたという。「薄さにこだわって,ここまでやらせてもらえるのかと思った。この設計には生産工場との協力が不可欠。どの段階から工場が入っているのか。設計者だけが薄くするんだと息巻いていても絶対出来ない。作り手と開発者が同じ思いを共有しないと成り立たない」(技術者)。

基板写真のページへ移る
(3)へ戻る