金属の棒が電池パックに付けられている。重量バランスから,強度を補強するためと見られる。
金属の棒が電池パックに付けられている。重量バランスから,強度を補強するためと見られる。
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タッチ・パッドをカバーするフィルム。真空成形で作っている。
タッチ・パッドをカバーするフィルム。真空成形で作っている。
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射出成形に使ったと見られる穴。この存在も外から見えなくしている。
射出成形に使ったと見られる穴。この存在も外から見えなくしている。
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背面カバーを外したところ。半透明のシートの下に大きく三つの基板が見えている。右のメイン基板の裏側に部品が存在しないことが見て取れる。
背面カバーを外したところ。半透明のシートの下に大きく三つの基板が見えている。右のメイン基板の裏側に部品が存在しないことが見て取れる。
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 いよいよ技術者たちの協力の下,VAIO Xの分解が始まった。まず電池パックを見て,「ここにある金属の棒,何だろう」と技術者はつぶやいた。電気的な接続などの役割は担っていないようであり,「おそらくは補強のため。ユーザーが交換できるようにする上で,左右に重たいものが集中しているのでこうした工夫が必要だったのだろう」(技術者)。

 タッチ・パッド部は,薄いプラスチックのフィルムのようなもので覆われている。「これは真空成形といって,加熱したフイルムを真空で引いて型に押し付けて成形する手法を使っている。よくできている。こういうカバーの仕方はウチも見習わないといけない」(技術者)。

 背面に見えるネジを外すが,まだネジ止めされている感触がある。背面には2個所,封をするようなシールが貼られている。「おそらく,この下にネジがあるだろう。3Gモジュールが入っているから,封止としての意味合いがあるのではないか」と技術者は推測した。

 一つ目のシールをはがしてみると,ネジはない。「これは金型で樹脂を射出成形するときに,注入するための穴だ。これを隠すのにわざわざシールをしているのか。意気込みを感じる」と技術者は感心していた。もう一つは想像通り,ネジが隠れていた。このネジを外すと,あとはプラスティックの爪で止めている形だ。

 背面カバーを外すと,半透明の絶縁シートがかぶされた基板類が見えてくる。背面カバーにカーボンが入っているので,絶縁シートが必要なのだろう。「きれいに収まっていて,整然としている。センスがいい」(技術者)。ベタベタと雑音対策部品を載せていないのは,「基礎技術力が高いか,よっぽど性根を入れて試作を練ったかは分からないが,結果として無駄なものがあまりない」(技術者)ことも,センス良く見える理由であるという。

 背面カバーの厚さは測定していないが,0.8mm程度だという。技術者は「すごいなぁ。薄くするために必死だ」と感心していた。

 メイン基板を背面から一通り見て,「コネクタ類が全部,向こう側を向いている。これは作業性が悪く,普通は製造部門に認めてもらえないやり方だ。片面実装にするなんて,かなりの気合いが入っている。これが筐体の薄さにかなり寄与している」と指摘した。「組み立てる際には,全部結線してからバッと載せるのかな。いずれにしても,かなり組み立ては難しい」(技術者)。

 見える箇所のネジを外すが,これだけでは基板は取り出せない。3Gモジュールを止めているネジなど,いくつかのネジはその上にテープがはってあった。さらにコネクタ類を外す。上に外すタイプや普通に抜くタイプなどが混ざっていて,「知らないと壊してしまいそうだ」(技術者)。

 結線を外して,ようやく基板を取り出せる状態になった。「しかし,これ組み立ての順番難しいな。一度結線してからバンと載せるのか。正しい手順はあるのだろうが,かなり大変そうだ」(技術者)。だからこそ国内工場を使っているのだろうと推測する。「全体的に見てMacBook Airより難しい。無理を言えば台湾などのODMメーカーを使ってもできないことはないかもしれないが,『どう組むんだろう』というくらい難しい機器を組み立てることが日本のお家芸」(技術者)。

 ただ結果として,組み立てにかかるコストは上昇する。「普通のノート・パソコンの2倍程度かかっているのではないか。A4くらいのノート・パソコンで,原価に占める組み立て費は6%くらい。通常難しいモバイル・ノートで8%くらい。組み立ての工数でいえば2倍以上かかる。VAIO Xは一般的なモバイル・ノートよりもちょっと小さいし,コネクタが裏面にあることも作業性を悪くしている」(技術者)。

(4)へ続く
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