新材料で成形したパソコンの筐体部品
新材料で成形したパソコンの筐体部品
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POS端末部品も試作
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新材料のペレット
新材料のペレット
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 NECは,2009年11月4日に発表した新開発のバイオプラスチック「Nucycle」において,結晶化時間を20秒と従来の約1/6に短縮した(Tech-On!の関連記事)。ポリ乳酸(PLA)の比率(有機成分中)が75質量%と比較的高いにもかかわらず,量産品に適用可能な機械的性能と成形性を両立できたのは,このためだ。同社は2010年中に,新材料を筐体に用いたパソコンを主に法人向けに発売する予定である。

 Nucycleの有機成分は,PLAが75質量%,添加剤(結晶化促進剤,難燃助剤)が25質量%である。これとは別に,吸熱剤として水酸化アルミニウムの粉末を配合している。水酸化アルミの配合比率を同社は明らかにしていないが,全体の40質量%前後のようだ。

 NECは,従来からPLAに水酸化アルミを添加して難燃性を高めることに取り組んでいた。ただし,水酸化アルミは難燃化効率がそれほど高くなく,単独で用いる場合は70質量%ほど添加する必要があった。しかし,そこまで添加すると,射出成形時の流動性を十分に確保できなくなったり,成形品がもろくなったりするという問題が発生していた。

 そこで新たに開発したのが,着火時に発泡を促進することでプラスチックの表面を強化する効果がある有機系の難燃助剤である。この難燃助剤と水酸化アルミを併用することにより,水酸化アルミの配合比率を従来よりも低く抑えられる。こうした取り組みにより,UL規格(UL-94)において2番目に高い難燃グレードの「V-0」(厚さ1.8mm)を達成している。

 成形性を高めるための結晶化促進剤は,花王が主導的に開発したものである。水酸化アルミ/難燃助剤/結晶化促進剤をPLAに均一に分散させる技術は,NECと花王が共同で開発した。また,新材料の製造・販売は花王が手掛ける予定で,NEC以外への販売も想定している。