図1 JVC・ケンウッド・ホールディングス 執行役員常務 新事業開発センター長の前田悟氏と「RYOMA」。前田氏が右手で持つのが,「M-LinX Tuner Box」である。
図1 JVC・ケンウッド・ホールディングス 執行役員常務 新事業開発センター長の前田悟氏と「RYOMA」。前田氏が右手で持つのが,「M-LinX Tuner Box」である。
[画像のクリックで拡大表示]
図2 開発背景
図2 開発背景
[画像のクリックで拡大表示]
図3 ネットワーク・サービス「M-LinX」でラジオ・コンテンツを表示したところ。コンテンツはエフエム東京が作製した。放送中の音楽データや天気予報,広告などを表示する。
図3 ネットワーク・サービス「M-LinX」でラジオ・コンテンツを表示したところ。コンテンツはエフエム東京が作製した。放送中の音楽データや天気予報,広告などを表示する。
[画像のクリックで拡大表示]
図4 同様のコンテンツを放送波で受信した場合。
図4 同様のコンテンツを放送波で受信した場合。
[画像のクリックで拡大表示]

 「現在のAV機器はAV危機(危ない機器)と言っていい。例えばテレビは,価格競争やコモディティ化,国内工場の空洞化が進んでいる。もはや価格競争だけの体力勝負に陥っている。加えて,ユーザーは『待っていれば,さらに価格が下がる』と考えているが,(米Apple社の)「iPod」やゲーム機などのように,手ごろな価格で欲しいものにはお金を出してくれる」(JVC・ケンウッド・ホールディングス 執行役員常務 新事業開発センター長の前田悟氏)――。

 このような状況の打破に向け,JVC・ケンウッド・ホールディングスは「ユーザーに欠乏感を与える商品の提供と,売り切りビジネスからの脱却の両立」(前田氏)をコンセプトに,新しいジャンルのAV機器「RYOMA(リョーマ)」とネットワーク・サービス「M-LinX(エム-リンクス)」を発表した。ともに,2010年春の製品化およびサービス開始を予定する。前田氏はソニーで「ロケーションフリー」の開発を主導したことで知られる(Tech-On!の関連記事1)。2008年10月1日のJVC・ケンウッド・ホールディングス発足時に現職となり,「第5の事業セグメント」の創出を表明していた(Tech-On!の関連記事2)。

 RYOMAは,Blu-ray Disc/HDDレコーダーと地上デジタル放送チューナー,FM/AMラジオ・チューナーを一体化したAV機器(ニュース・リリース1)。「これ一台で,“観る(映像)“聴く(音楽)”“録る(録画)”が楽しめる。これが,ユーザーに欠乏感を与えられる製品と考えている。現在,ラジオを聴く環境はクルマ内だけであり,家庭内にはない。ホーム・オーディオ・ライフを復活させたい」(前田氏)という。なお,詳細なハードウエア仕様は明らかにされなかった。

 M-LinXは,ラジオ放送に映像などさまざまなデータを付加して,インターネット網で配信するサービス(ニュース・リリース2)。電波障害などによる難聴取地域に向けるほか,付加データを活用した新たな楽しみ方を提案するという。サービス提供による広告収入などから,「売り切りビジネスからの脱却を目指す」(前田氏)という。現在,サービス開始に向けて,複数のラジオ局と交渉中とした。

 同サービスはRYOMAのほか,新たに開発した専用チューナー「M-LinX Tuner Box」で利用できる(ニュース・リリース3)。サービス拡大に向け,「他社へのライセンス提供も検討中」(前田氏)とした。サービスの配信地域は,現状のラジオ放送の利用地域に限定するため,ユーザーの受信地域を特定できる技術を開発したとする。技術の詳細については,「秘密だが,(居住地の)郵便番号を入力するだけで判断するわけではない」(前田氏)と述べるにとどまった。

■変更履歴
記事掲載当初,「2009年春の製品化」としていましたが,「2010年春の製品化」の誤りです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。