試作した12cm角の有機ELパネル。基板には金属箔を用いている。
試作した12cm角の有機ELパネル。基板には金属箔を用いている。
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 ベルギーAGFA-Gevaert NV,オランダPhilips Research,オランダHolst Centre,そしてベルギーIMECとオランダTNOは,ITOの代わりに高導電性の透明樹脂電極を用いて,12cm角のフレキシブルな有機EL照明パネルを試作したと発表した。ITOは低温プロセスでの導電性の確保が課題だった。この透明樹脂は導電性が高く,しかも塗布法に向くため,印刷プロセスを用いやすいという。今回の成果は,フレキシブルな有機EL照明を印刷プロセスで製造することを目指すEUのプロジェクト「Fast2Light」の支援を受けたとする。

 この透明樹脂は,AGFA社が写真用フイルムの静電気防止材として開発し,利用していた透明樹脂「Orgacon」。有機EL素子でも使われている導電性樹脂のPEDOT/PSSを基にしている。同様な材料の研究は,三洋電機と東京工業大学なども進めている(関連記事)。

 一般的な有機EL照明パネルは,透明電極としてITOの薄膜とPEDOT/PSSの薄膜を積層したものが多い。今回は,ITOの代わりにOrgaconを用いることで「透明電極の導電性が約6倍に高まった」(AGFA社)という。ただし,具体的な導電率などは明らかにしていない。

 作製した有機EL照明パネルは,透明電極上に作製する配線パターンもインクジェットで印刷するなど,印刷プロセスの比率を高めている。基板には金属箔を用いており,手で曲げられるという(関連記事)。輝度や発光寿命などは未公表である。