エレクトロニクス事業の構造改革について説明するソニー 代表執行役 社長 兼 エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏。
エレクトロニクス事業の構造改革について説明するソニー 代表執行役 社長 兼 エレクトロニクスCEOの中鉢良治氏。
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 ソニーは2009年度に総額2500億円のコスト削減(2008年度比)を目指す緊急リストラ策を2009年1月22日に発表した(関連記事)。この中で,特に対策が求められている液晶テレビ事業に関し,生産体制,設計体制,サプライチェーン・マネジメントの3領域で改革に取り組む方針を示した。

 生産体制については,2009年6月をメドに愛知県一宮市にあるソニーイーエムシーエス 一宮テックでの生産を終了し,愛知県稲沢市にある同社 稲沢テックに集約する。一宮テックの正規社員は原則として稲沢テックに異動し,非正規社員については両事業所を合わせて約1000名の削減を見込む。一宮テックの今後の活用方法は検討中とする。また,海外市場向けの生産についてはOEM/ODM展開を加速し,アセットライト化を推進する。

 設計体制については,ハードウエア/ソフトウエア・プラットフォームの統合を進め,世界各地に分散した設計開発リソースの最適化を実施する。設計および機能検証などの一部の領域に関してはインドへオフショア化する。こうした施策によって,全世界で設計および関連する間接部門の人員を2009年度末までに約30%削減する。

 サプライチェーンについては,世界各地に分散した従来の生産管理体制から,全世界を集中管理する体制に変更する。全世界の調達,生産,販売をリアルタイムにとらえる仕組みを構築し,在庫水準を削減するという。

半導体は長崎の旧世代ラインを閉鎖

 一方,半導体事業については,論理LSI事業のアセットライト化を加速する。ソニーセミコンダクタ九州の長崎テクノロジーセンター3号棟にある旧世代の論理LSI生産ラインを2009年3月末で閉鎖し,同社 鹿児島テクノロジーセンターへ製造移管する。

 中小型液晶パネル事業については,事業部と製造事業所の一体運営を進める。具体的には,神奈川県にある事業部機能を,製造事業所である愛知県のソニーモバイルディスプレイに統合し,高輝度かつ低消費電力の高付加価値モデルの開発・商品化を加速する。

 バッテリー事業については,これまでの競争優位性をさらに強化するため,積極的に投資するほか,中小型液晶パネル事業と同様に事業部と製造事業所の一体運営を目指す。具体的には,東京本社にある事業部機能を,製造事業所である福島県のソニーエナジー・デバイスに移管する。

代表執行役は年収50%カット

 ソニーは緊急リストラ策の発表で役員や管理職の報酬カットについても説明した。まず,代表執行役である会長,社長,副社長の3名の賞与については全額を返上する。その他の役員の賞与についても前年比70%以上の減額を予定する。役員の定額報酬については減額を予定しているが,減額幅等の詳細については検討中である。

 この結果として,賞与と役員報酬の減額をあわせて代表執行役の年収については前年比50%以上の減額,その他の役員の年収についても前年比30%以上の減額を予定している。また,管理職についても賞与の大幅減額を行う。その削減幅は前年比35~40%を予定する。加えて管理職については月次報酬の減額も予定しており,賞与の減額とあわせて年収で10~20%の減額となる予定である。

 また,今回の構造改革によって人員の最適化を図るため,社員の社外転進を支援する制度として,早期退職支援制度を2009年2月中旬から実施する。