照明付き,伸縮可能などの機能を付加したドライバー
照明付き,伸縮可能などの機能を付加したドライバー
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「動力線非貫通型搬送ロボット」のデモ
「動力線非貫通型搬送ロボット」のデモ
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「手袋双着機」の外観
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はんだごて操作とはんだ充てんが片手でできる「半手ごて」(写真は,プラモデルの歯車を利用したスライド式)
はんだごて操作とはんだ充てんが片手でできる「半手ごて」(写真は,プラモデルの歯車を利用したスライド式)
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 今回を第1回として来場者の注目を集めた「The高専@SEMICON」だが,そのベースとなった取り組みが2007年に実施されていた。福島県の県立工業高校の高校生が「セミコン・ジャパン」に出展したプロジェクトである。今年も会津工業高等学校と喜多方工業高等学校の2校が出展し,昨年を上回る作品を披露した。いずれも,高専学生に負けないほど面白いアイデアや工夫が盛り込まれている。今回,高校生が出展している福島県半導体関連産業協議会のブースを訪れ,展示の様子を実際に見てみた。

ドライバーに機能を付加,動力線なしで真空ロボットを動作

 会津工業高校が展示していたのは,さまざまな工夫を導入した多種多様なドライバー(ネジ回し)と,真空装置用途を想定した「動力線非貫通型搬送ロボット」である。

 ドライバーについては,「照明付き」「伸縮可能」「直角」「ペン型」といった特徴を持たせた,独自の作品を出展した。いずれも自作したもので,力作ぞろいだ。「照明付きドライバー」は,柄の部分に6個のLEDを付けて,先の方を明るく照らせるようにしている。懐中電灯が入らないような狭い機械の中や暗闇でも照らすことができる。柄の中の電池ケースに単5電池が2本入っており,電池寿命は3日以上持つという。「伸縮ドライバー」は,文字通りドライバーの長さを長くしたり短くしたりできる。「ピン止めを改善することで,昨年よりも,調整可能な長さを大幅に増やした」(機械科3年の薄正也さん)と言う。このほか,ハンドル・グリップを親指と人差し指で回転させるだけでネジを締められる「ラチェット付直角ドライバー」や,ボールペンのように手軽に持ち運べる「ペン型ドライバー」を出展した。

 動力線非貫通型搬送ロボットは,配線を使わずに真空装置内の搬送ロボットに動力を伝えることができるものである。電磁誘導を利用することによって搬送ロボットを動かす。動力線を通す必要がないため,真空度低下につながる貫通部を不要にできる。「ガラス製ベルジャー(真空容器)を使った装置内の搬送ロボットに使える」(電気科2年の米畑勇さん)と言う。

手袋を両手同時に自動装着,はんだごて操作とはんだ充てんが片手で可能

 喜多方工業高校が展示していたのは,クリーン・ルーム用の手袋をハンドフリーで両手同時に装着できる「手袋双着機」と,はんだごての操作とはんだの充てんを片手で行える「半手ごて」である。

 手袋双着機に関しては,昨年,片手のみ装着できる装置を出展していた。そこで,今回は「両手同時の装着を目指した」(電気電子科2年の金田佳純さん)と言う。掃除機の吸引を利用して,筒のような形の装置にセットした手袋の中を押し広げ,簡単に手を入れられるようにしている。スイッチを入れると,手を入れやすいように,エア・シリンダによって挿入口が広がるという工夫も盛り込まれている。クリーン・ルーム用のフィット性の高い手袋も,簡単に装着することができる。病院用の手袋などにも使える。

 半手ごては,シャープ・ペンシルやプラモデルの歯車といった「身近な材料で手軽に製作した」(電気電子科2年の長谷部拓さん)のが特徴である。自動はんだ送り機も市販されているが高価だという。はんだごての操作とはんだの充てんを片手でできれば,基板の調整や,素子の取り付け調整にもう一方の手を利用することができる。シャープ・ペンシルを利用した1号機は,シャーペンと同様にノック操作によってはんだを送り出す。一方,プラモデルの歯車を利用した2号機は,歯車を回転させてスライドするようにはんだを送り出す。

【動画】工業高校の展示をビデオでご覧いただけます(制作=BPtv)