石見銀山探査ロボット。上が板バネを利用したもの,下がレーザー測域センサーを搭載したもの。
石見銀山探査ロボット。上が板バネを利用したもの,下がレーザー測域センサーを搭載したもの。
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LEDを使った“現代版”の螺灯
LEDを使った“現代版”の螺灯
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組み立てながら技術を学べる「オリジナル教材ロボット」
組み立てながら技術を学べる「オリジナル教材ロボット」
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声で操作する「笑いを誘うロボット」
声で操作する「笑いを誘うロボット」
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 「セミコン・ジャパン2008」の高等専門学校(高専)特設ブース「The高専@SEMICON」において,松江工業高等専門学校が,地元島根県の世界遺産「石見銀山」の探査ロボットなどを展示した。石見銀山は鎌倉時代末期の1309年に発見され,戦国時代の1526年ごろに本格的な採掘が始まり,1923年の休山まで約400年にわたって採掘されてきた。約600カ所の坑道(間歩)が存在し,そのほとんどは立ち入り禁止になっている。この立ち入り禁止の坑道内の映像を撮影するロボット探査プロジェクトが2007年3月に始まったが,今回展示したのはこのプロジェクトで活躍した探査ロボットだ。

 展示した探査ロボットは2台。いずれも最小幅23cmの坑道内を自在に走行できる。1台は,車体に板バネを利用することで形状の柔軟性を高め,急激な段差をものともせずに坑道を走れるようにした。「持ち運びも容易」(電子制御工学科の学生の高橋勇作さん)と言う。もう1台は,レーザー測域センサーを搭載しており,坑道の形状を計測することができる。このデータを基に坑道を3次元散布図で復元し,その体積から銀の採掘量を世界で初めて算出したという。

 採掘が行われていた当時は,暗い坑道を歩くために,サザエの殻を利用した「螺灯(らとう)」と呼ばれる明かりが使われていた。サザエの殻の中に燃料(油)を入れ,火をつける。この螺灯を電子的に再現したものも合わせて展示されており,注目を集めていた。殻の中には,電池やマイコン,マイクなどが入っている。LEDの光が炎のように揺らめいたり,息を吹きかけるとLEDの光が消えたりするなど,楽しい工夫が盛り込まれていた。

教材ロボットやホビー・ロボットも展示

 松江高専はこのほか,組み立てながらロボット技術を学べる「オリジナル教材ロボット」や,人と人とのコミュニケーション増進を狙った「笑いを誘うロボット」を展示した。

 オリジナル教材ロボットは,中学生以上を対象に,松江高専が独自開発した。ロボットの機構を学べる上に,プログラミングを通して制御についても学習することができる。「市販のキットでは簡単に学べるものが少ない」(電子情報システム工学専攻1年の皆尾登志見さん)と言う。今回のロボットは,一人でも簡単に作れること,そして自宅で手軽にプログラミングできることを目指して開発したとする。

 笑いを誘うロボットは,マイクに向かって声を出すと動き出すロボットだ。開発にあたっては,まず「人が面白さを感じる」ことについて分析したという。その結果,まず「リモコンで操作するよりも,音声で操作するロボットの方が面白いと感じてもらえそうなことが分かった」(電子情報システム工学専攻1年の玄行照朗さん)。さらに,「動物が首や尾を動かすような,小刻みな“振る”動作に面白さを感じることが多いことも見えてきた」(玄行さん)と言う。今回のロボットには,これら二つの要素を盛り込んでいる。

【動画】各種ロボットをビデオでご覧いただけます(制作=BPtv)

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