図A-1 携帯電話機がセンサ端末に University of California,Berkeley校は,携帯電話機や昆虫に各種センサを搭載する技術を開発中である。携帯電話機には窒素酸化物(NOx)など公害の指標となるような成分を検知するガス・センサを搭載する計画。街中で交通渋滞が激しい場所などが自動的に分かるようになるという。
図A-1 携帯電話機がセンサ端末に University of California,Berkeley校は,携帯電話機や昆虫に各種センサを搭載する技術を開発中である。携帯電話機には窒素酸化物(NOx)など公害の指標となるような成分を検知するガス・センサを搭載する計画。街中で交通渋滞が激しい場所などが自動的に分かるようになるという。 (画像のクリックで拡大)

携帯電話機も昆虫もセンサ端末に

 センサは,1台の電子機器内で利用するだけでなく,多数の機器から情報を収集することにも使われる。それがセンサ・ネットワークである。

 「MEMSとセンサの研究のメッカ」。センサの研究者や技術者からこう称される米University of California,Berkeley校のBerkeley Sensor & Actuator Center(BSAC)で現在盛り上がっている研究の一つが,携帯電話機や昆虫をセンサ・ネットワークのセンサ端末にするという研究である(図A-1)。いずれも,街中や自然界のあちこちに多数存在するものであるため,さまざまな情報を自然に集められるというわけだ。

 BSACが携帯電話機に搭載することを検討しているセンサの一つが,空気中の各種微粒子の濃度を検知するセンサ。「例えば,ディーゼル車の排ガス濃度やたばこの煙の濃度,さらには水素ガスなどを検知できるようになる」(BSAC,Executive DirectorのJohn Huggins氏)。

 微粒子の検出には例えば,「圧電薄膜共振器(FBAR:film bulk acousticresonator)」の振動数の変化を利用することを検討している。FBARは携帯電話機などで,周波数フィルタとして採用が広がりつつある。CMOS技術で製造した振動回路用のIC上に形成。水晶振動子などに比べて小型にできるのが特徴である。この研究には,米Intel Corp.なども出資しており,携帯電話機に載せるための小型化を進めている。

 昆虫を動くセンサ端末にしようとしているのは,2008年2月1日に米Universityof Michiganから移籍してきたばかりのProfessor Michel Maharbiz氏の研究グループ。実際に研究を主導しているのは,日本出身の佐藤裕崇氏である。既に,さなぎ時代に電極を体内に埋め込むなどして飛翔のコントロールには成功したA-1)。「次の目標は無線通信モジュールなどを搭載して文字通りラジコンにすること。カメラなども,MEMS技術で小型化して昆虫に載せることを計画している」(佐藤氏)という。

参考文献
A-1) 野澤,「昆虫を制御可能にして動くセンサに,MEMS 2008でMichigan大が発表」,『日経エレクトロニクス』,2008年1月28日号,no.970,p.14.

―― 次回へ続く ――