原田 昌紀氏
グーグル ソフトウェア エンジニア
「経営陣もエンジニアなので居心地がいい。米国企業では,日本企業よりも相対的にプログラマーの地位が高いと思う」
世間ではこのうち「20」や「10」に分類されるサービスに注目が集まることが多い。しかし,「実はその裏側では,スパム対策や品質の向上といった,より便利な検索サービスを提供するための地味ではあるが重要な技術開発に,多くの労力を割いている」(同氏)と説明する。
Google社では,2004年8月の株式公開で,社員の中に多くの“資産家”が誕生した。米国では通常,こうした成功者たちはいったん会社を辞めるケースが多いが,同社は例外的に離職率が低いことで有名だ。
エンジニアを大事にする社風や,自由で充実した職場環境を提供していることが,Google社の急成長を牽引する大きな要因になっていることは間違いない。
成功の原点はPageRank
Google社が持つ技術の代名詞となっているのは,創業者の1人,Larry Page氏が開発した「PageRank」(図A-1)。この技術は同氏が米Stanford University在学中に開発したため,特許は現在,同大学に帰属している。しかし,これこそがGoogle社を今日の成功へと導いたといっていいほど重要な技術である。
PageRankは,WWWサイトの検索精度を向上させるアルゴリズム。サイト間のリンク構造に着目し,他のサイトからのリンクが多い,しかも知名度が高いなど人気があるサイトからのリンクはより重要,とのルールに従い各サイトに点数を付ける。検索キーワードで複数のページが見つかったときに,この点数を基に表示順を決める。PageRankによって,Google Searchは検索結果の精度が高いとの評価を不動のものにした。
今でこそ各社のサービスで差は少なくなったが,WWWサイト検索の商用サービスでは,入力される膨大な数のキーワードを瞬間的に処理するスピードが重要。Google社は低コストかつ短時間で検索要求を処理するために,分散処理技術の開発や,検索サーバ機の開発を行ってきた(図A-2)。実は同社は,世界最大規模のデータ・センターを保有し,常に10数万台以上のLinuxサーバを稼働させるハードウエア企業でもある。
―― 次回へ続く ――