図1 KDDI 代表取締役執行役員副社長の伊藤泰彦氏が基調講演で示したメッセージ。「Google社のような,ベータ版として新しいことにどんどん挑戦する姿勢を見習う必要がある」とした
図1 KDDI 代表取締役執行役員副社長の伊藤泰彦氏が基調講演で示したメッセージ。「Google社のような,ベータ版として新しいことにどんどん挑戦する姿勢を見習う必要がある」とした
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図2 固定通信と移動体通信のトラフィックの推移。固定通信ではP2Pがこの1年間はほぼ横ばいで,動画のストリーミングが増えているという
図2 固定通信と移動体通信のトラフィックの推移。固定通信ではP2Pがこの1年間はほぼ横ばいで,動画のストリーミングが増えているという
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図3 放送関連サービスに関する米国と日本の比較
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図4 ケータイが「パーソナル・エージェント」になるとの見方を示した
図4 ケータイが「パーソナル・エージェント」になるとの見方を示した
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図5 必要なときに必要な機能が手に入る「プラグイン化」のイメージ
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 「日本のケータイ業界は『ガラパゴス』などと言われるが,世界との勝負で競争力を維持するためには,安価な端末の開発ばかりにシフトするのではなく高機能な端末を作り続けるべきではないか」----。KDDI代表取締役執行役員副社長の伊藤泰彦氏が「CEATEC JAPAN 2008」の基調講演で,固定通信と移動体通信,そして放送サービスの動向とKDDIの取り組みについて語った(図1)。

 2005年に次世代の通信インフラ構想「ウルトラ3G」を打ち出したKDDIは現在,その構想を「FMBC」(fixed mobile broadcasting convergence)という考え方に発展させ,固定と移動,そして放送を融合した通信サービスの実現を目指している。

 固定通信の分野では,「昨年のCEATECでの講演では,P2Pのトラフィックが深刻な状況になっていると紹介したが,そのトラフィックの増加は一段落した。この1年間で急激に増えたのが,映像ストリーミングのトラフィックだ」(同氏)とし,同様のことが移動体通信でも起こり始めていると説明した。動画のダウンロードが,移動体通信ネットワークのトラフィック増加の要因の一つになっているとした(図2)。

 放送サービスの分野では,有料放送サービスの加入率が米国では75%であるのに対し日本では26%に留まっていることなどを指摘し,FTTHなどを活用しながらもっと放送関連サービスを充実させる必要があるとの認識を示した(図3)。Comcast社やTime Warner社らがネットワーク経由で提供している見逃し視聴サービスなどを紹介し,国内でもこうしたサービスの検討が進むことに期待しているとした。

 移動体通信の分野ではこの1年の変化として,携帯電話機の販売奨励金の廃止によって販売台数が前年比2~3割減になったことや,iPhoneの国内販売やAndroid端末の発表(Tech-On!の関連記事1)があったことなどを挙げた。「競合企業の端末ではあるが,iPhoneは操作性などの面でエポック・メイキングな端末だ。今後の端末に大きな影響を与えるだろう」(同氏)。「顧客が携帯電話機を選ぶときの基準が『ラスト・ワンインチ』になってきた。我々もユーザー・インタフェースにこだわった端末を出していきたい」(同氏)と意欲を見せた。

 また伊藤氏はケータイが今後,「パーソナル・エージェント」になるとの見方を示した(図4)。「これまでは個人と外部の接触点だったが,これからは生活支援やレコメンド(推薦)といった機能を備えるようになるだろう」(同氏)。そのとき,「その場に必要な機能を,必要に応じて利用可能にする」(同氏)という,ケータイの機能のプラグイン化の構想も紹介した(図5)。

 通信会社を取り巻くこうした環境の中でKDDIが進めている特徴的な取り組みとして伊藤氏は,テレビや携帯電話機で映像や音楽を楽しめるSTB「au BOX」(Tech-On!の関連記事2),視聴者が映像の視点を選べるIPTV向けの「自由視点技術」,携帯端末向けマルチメディア放送として提案中の「MediaFLO」,KDDIが出資するUQコミュニケーションズが2009年夏に本格サービスを開始するモバイルWiMAXなどを紹介した。