今年のCEATECでモバイル分野の中心になるのは「スマートフォン」だろう。割賦販売方式の普及で,携帯電話機の出荷台数減少に転じるなど,日本の携帯電話機を取り巻く環境はここ1年で大きく変化した。これまで続けられてきた端末の高機能化も一段落した感がある。

 代わってスマートフォンが注目されている。その象徴とも言えるのが米Apple Inc.が開発し,日本ではソフトバンクモバイルが販売する携帯電話機「iPhone」である。CEATECにはアップルやソフトバンクモバイルは出展しないが,iPhoneを強く意識したスマートフォンは,携帯電話事業者や端末メーカーのブースで見られるだろう。Windows Mobile搭載機や米国でメジャーなBlackBerry端末を販売しているNTTドコモに加え,KDDIからも同社初のスマートフォン「E30HT」(台湾HTC Corp.製)が登場する。

 ネットワーク経由で大量のデータをやり取りするスマートフォンにとって,通信速度の向上は重要だ。LTEやモバイルWiMAXといった第3.9世代(3.9G)の通信方式も実現の道筋が見えてきた。CEATECではこうした技術を実現するためのLSIや計測機器の最新状況が明らかになるはずだ。エリア拡大の切り札と目されている小型基地局「フェムトセル」などの技術にも注目したい。

 スマートフォンの構成部品では,最も重要なのはタッチ・パネルだ。抵抗膜式,静電容量式,光学式といった方式の違いに加え,マルチタッチへの対応,表示画面の品質に直結する透過性なども製品によって異なる。LSI関連では,米Tensilica, Inc.がNECの携帯電話機用LSI向けにコンフィギュラブルCPUコア「Xtensa LX」をライセンスしたのがトピックだ。今後は携帯電話機でも,開発の負荷を減らすために,コンフィギュラブルCPUやFPGAが搭載されるようになるかもしれない。その他の部品では,組み込み型のプロジェクターにも注目したい。モジュールの小型化が進み,携帯電話機/スマートフォンへの搭載が視野に入ってきた。

 携帯電話機以外では,台湾ASUSTeK Computer Inc.の「Eee PC」が火付け役になった小型ノート・パソコンの分野がある。小型化とコスト削減という相反する要求をメーカーがいかに両立させているかが焦点だ。

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