Fox社のAndy Setos氏
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Seto氏が指摘する3次元テレビ技術に関する要求
Seto氏が指摘する3次元テレビ技術に関する要求
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 米NVIDIA社が主催する画像処理関連イベント「NVISION 08」(Tech-On!関連記事)において,米大手メディア企業のFox Entertainment Group, Inc.,President of EngineeringのAndy Setos氏が,次世代の動画コンテンツの視聴環境における新技術への期待を述べた。米大手スタジオの技術トップの講演ということもあり,参加者から大きな注目を集めた。

 まずSetos氏は,3次元の動画技術への期待を強く訴えた。映画制作環境はこれまで,白黒,カラー,さらなる高画質と進化してきたが,次は3次元の世界になると主張する。「今はもう誰も,モノクロで映画やテレビ番組を制作しようとは考えない。カラーが当たり前だ。それと同じように今後5年間で,映画やテレビ番組を3次元で作成することを当たり前にしたい」(同氏)。既にデジタル・シネマ技術による3次元の映画視聴環境はほぼ完成したと指摘し,次の課題はテレビにあるという。

 Setos氏は,かつて1950年代にも3次元映画技術の勃興期があったことに言及しながら,現在の3次元テレビへのブームも,道を誤ると先例のように失敗してしまうだろうと指摘した。3次元テレビを市場で成功させるために,同氏は以下の点に注意を払う必要があるという。まず3次元テレビ技術は,視聴側のテレビの種類やコンテンツ配信技術に依存しないことが不可欠であるとした。さらに,これら技術で作成した3次元テレビ番組は,現行の2次元テレビでも楽しめること,そして3次元テレビ番組は,ジャンルを問わず提供されるべきであるという。「我々は,スポーツ番組から『long form format』(映画や1時間程度のテレビ・ドラマなど)まで,幅広く3次元コンテンツを作成したいと考えている」(同氏)。

 加えて同氏は,メモリ・カード媒体への期待も表明した。米国市場で動画コンテンツをユーザーに配信する媒体として,フラッシュ・メモリを採用するメモリ・カードを用いたいという。「現在,市場で購入できる16Gバイト容量のメモリ・カードであれば,SDTV画質の映画コンテンツなら10本,HDTV画質の映画コンテンツなら1~3本を格納できる。32Gバイト容量製品もまもなく登場する。これだけあれば容量的には十分だ」(Setos氏)。

 ただし,現行のメモリ・カード媒体では,転送速度が遅すぎると指摘した。同氏は将来,メモリ・カードに動画コンテンツを配信する際,店舗に設置したKIOSK端末などを使うことを想定する。その場合,メモリ・カードにコンテンツを転送する際の速度が遅いと,ユーザーが長時間待たされることになり,普及の阻害要因になるとした。「我々は最低でも,3つのHDTV映画コンテンツを45秒~1分の間で転送することをメーカーに要求している。現状のメモリ・カードは,20Mバイト/秒の書き込み速度を実現しているが,この速度を数倍高速化させる必要があるだろう」(Setos氏)。