投資や生産に対して積極的な姿勢を貫き,規模拡大によるコスト削減を重視する戦略を採ってきた台湾Chi Mei Optoelectronics Corp.(CMO)。同社の今後の戦略が,液晶パネル需給に与える影響は大きい。同社PresidentのJau-Yang Ho氏へのインタビューでは,当面の減産によって需給改善に努力する姿勢が感じられた一方で,2009年の第8.5世代ライン稼働開始と第6世代ライン増強に対する強い意欲がうかがえた。(聞き手は,田中 直樹=Tech-On!)

CMO社 社長 Jau-Yang Ho氏
CMO社 社長 Jau-Yang Ho氏 (画像のクリックで拡大)

――液晶パネルの市況が変調を来しています。

 2008年初めには,第3四半期の市況は「とても良いだろう」と予測していました。しかし,6月中旬から状況が急に変わりました。市況は急速に悪化し,パネル価格も急落しました。全世界で消費マインドが落ち込み,経済成長が止まり,不況に陥ったことが影響しています。セット・メーカーからの注文も止まりました。その結果,7月の売上高は6月に比べて17%も低下しました。第3四半期の出荷量は当初の見込みより減らします。第3四半期は例年かき入れ時ですが,今年は在庫が増えているため,在庫調整のために減産するのは仕方ありません。

――減産はどの程度実施するのでしょうか。

 第3四半期の生産量は,第2四半期に比べて10~15%削減する予定です。減産の目標は,「第3四半期末の在庫を,第2四半期末の420億台湾ドルよりも増やさないようにすること」です。そのために7月中旬から10%の減産を開始し,7月全体では5%の減産となりました。8月は20%,9月は15%,それぞれ減産する予定です。いずれも液晶モジュールだけでなく,液晶セルの減産を実施します。なお,これらの減産率は全社平均ですので,製品の種類や工場によって減産率は異なります。

――10月も減産を継続するのでしょうか。

 8月に入って,市況に少し回復の兆しが出てきました。市況の底は7月で,今は底を脱しつつあると見ています。しかし,第4四半期の市況はまだ見えません。最悪の場合,つまり不況が続いている場合は,減産を継続することになります。生産能力,稼働率はフレキシブルに考えます。工場の稼働率を確保することよりも,部材の調達コストをコントロールすることの方が,液晶パネルのコスト競争力を高めるうえで重要だからです。

――第8世代ライン(ガラス基板寸法2200mm×2500mm)の建設を進めていますが,その狙いは。

 2009年第3四半期のテスト・ラン,第4四半期の量産稼働を目指して,高雄県の路竹に工場を建設中です。われわれは「第8.5世代」と呼んでいます。この第8.5世代ラインでは,32型,46型,52型,55型のパネルを効率よく生産することができます。2008年第4四半期に装置搬入を開始する予定です。2009年第3四半期に1万シート/月規模で立ち上げ,第4四半期に3万シート/月へ拡大します。

 このほか,第6世代ライン(ガラス基板寸法1500mm×1850mm)の生産能力を増大させる予定があります。2008年第1四半期に1万シート/月規模で生産を開始したラインで,現在の生産能力は8万シート/月です。現在は減産中のため,実際のガラス基板の投入枚数は5万~6万シート/月です。2009年は,生産能力を8万シート/月からさらに拡大する予定があります。

――CMOが今後力を入れていく製品は。

 現在の売上高構成はモニター向けとテレビ向けに偏っているのですが,これを改善し,ノートPC向け,モニター向け,テレビ向け,中小型の4分野をバランス良く成長させていきたいと考えています。

 ノートPC向けでは,画面アスペクト比16:9の15.6型,17.3型,18.5型の供給量を大幅に増やし,第4四半期から量産化する計画です。また,低価格ノートPC向けの8.9型と10.1型の量産出荷を,10月から開始します。これらについては,価格を犠牲にしてでも積極的に顧客を開拓し,出荷量を増やしたいと考えています。モニター向けパネルは,画面アスペクト比16:10から16:9への移行を進めます。今後の主力は,16:9の15.6型,18.6型,21.6型,23.6型になります。

 テレビ向けは現在,全出荷台数の約40%を26型,約35%を32型が占めています。今後は,40型以上の比率を増やし,さらに2009年稼働の第8.5世代ラインによって52型や55型も生産していきたいと考えています。また,最近15.6型や21.6型のテレビ向けパネルを開発しました。特に15.6型は,モニター向けやノートPC向けとしても使える,非常に楽しみなサイズです。第5世代ライン(ガラス基板寸法1100mm×1300mm)で18面取り,第6世代ラインで36面取りすることができます。

 中小型は今後もっと伸ばしていきたいが,ターゲットの設定が難しい。2~3型の小型パネルを中心に生産していますが,生産量は少ないのが現状です。今後は8.9型などの中型パネルの生産も検討しています。

このインタビューの詳細は,『NIKKEI FPD 2009 産業動向編』(10月29日発行)に掲載しています。