台湾最大手の液晶パネル・メーカーとして確固たる地位を築いたAU Optronics Corp.(AUO)。パソコン向けに続き,テレビ向けパネルでも韓国Samsung Electronics Co., Ltd.やソニーといった有力メーカーを顧客に持ち,強力な事業基盤を構築した。同社President&Chief Operating OfficerのLJ Chen氏へのインタビューでは,こうした自社の競争力に対する強い自信が見て取れた。需要が低迷し,パネル価格が急落している最近のパネル市況の下でも,AUOの成長戦略は揺るがない。(聞き手は,田中 直樹=Tech-On!)

AUO社 社長 兼 COO LJ Chen氏
AUO社 社長 兼 COO LJ Chen氏 (画像のクリックで拡大)

――液晶パネルの市況が急速に悪化しています。

 2008年の業績は,当初予測を下回る可能性が高いでしょう。上期はおおむね好調でしたが,6月下旬から状況が急変しました。サブプライム問題,原油価格の高騰,物価上昇など,世界的な経済状況の低迷が影響し,液晶パネルの需要も弱くなりました。在庫も増えており,現在,液晶パネル業界は調整期間にあります。われわれも,7~9月の第3四半期全体で10%の減産を実施します。

――10月も減産を継続するのでしょうか。

 10月以降については,まだ方針を決めていません。今後の在庫の推移を見ながら決める必要があります。私は,第3四半期は,在庫が減少すると見ています。第2四半期に在庫が増えたことを受けて,液晶パネル各社が生産調整を始めたからです。しかも,第3四半期はもともと繁忙期です。第4四半期も繁忙期であることから,パネル在庫はさらに減少し,事業環境はもっと良くなるでしょう。

 2009年の事業環境についてはまだハッキリとは見えませんが,以前考えたほど悪い状況にはならないのではないかと思っています。液晶パネル各社が第2四半期と第3四半期に在庫調整を進めており,2008~2009年の生産能力拡大に慎重だからです。減産の比率はメーカーによって異なりますが,どのパネル・メーカーも市場を見ながら生産を調整しています。日本や韓国のパネル・メーカーも同じ方針を採るでしょう。

――シャープがテレビ向けパネルの外販に本格参入するなど,競争はますます激化しています。その中で,AUOはどのように強みを発揮していくのでしょうか。

 Samsung Electronicsやソニーといった世界で1位,2位を争う液晶テレビのブランド会社が,最も重要視している液晶パネルの外部調達先。それが,われわれAUOです。もちろんSamsungやソニーは内製パネルの調達を最優先するのですが,その次にAUOを重要視しています。こうした存在になっていることが,AUOの強みです。われわれは優れた技術をベースに,強い顧客基盤を確保してきました。工場の生産効率も高く,液晶パネル専業メーカーとして最も付加価値が高くコスト競争力のあるパネルを供給していると自負しています。

 市況が悪化したからといって,われわれが液晶テレビの大手ブランド会社から切り捨てられ,業績が大きな影響を受けることはないと考えています。液晶パネルの市況のサイクルが1年~1年半であるのに対して,液晶テレビのブランド会社とのパートナシップは少なくとも1年半~2年は続きます。

――第8世代ライン(ガラス基板寸法2200mm×2500mm)の建設を進めていますが,その狙いは。

 2009年下期の量産開始を目指して,台中の中部科学園区内で建設中です。われわれは「第8.5世代」と呼んでいます。この第8.5世代ラインでは,46型以上の大型テレビ向けパネルを生産する予定です。なお,この新工場の中には,この第8.5世代ラインとともに「第7.5世代」の生産ライン(ガラス基板寸法1950mm×2250mm)も建設しており,二つの世代の「ハイブリッド・ライン」とする計画です。

――「46型以上の大画面液晶テレビは売れていない」と聞きます。

 「46型以上,50型級の大画面液晶テレビが売れていない」というのは,正しい認識ではありません。「予想より売れていない」という人がいますが,それは短期的な話に過ぎません。長期的に見れば,液晶テレビの需要はより大画面へシフトすると確信しています。消費者は大画面を好みます。

 50型級の大画面液晶テレビの需要拡大は,いかに低価格化できるかどうかにかかっています。家庭用のアプリケーションですから,価格が最も重要です。安くなれば,確実に売れます。しかも,家庭用ですから,需要は膨大です。われわれは,現在建設中の第8.5世代ラインを稼働させることによって,こうした50型級の液晶パネルを安く作ることができます。

このインタビューの詳細は,『NIKKEI FPD 2009 産業動向編』(10月29日発行)に掲載しています。