新日本製鉄の八幡製鉄所は,火災の影響を受け一時稼働停止していた高炉に関して,2008年7月30日午前7時26分に高温空気の送風を再開した。再稼働可能な状態であることを確認したため。ただし,コークス炉は再稼働のメドが付いていない。

三井鉱山のコークスガスを新日鉄の高炉へ

 同製鉄所では2008年7月29日,石炭運搬用のベルトコンベヤの出火に端を発する火災により,コークス炉および高炉の稼働を停止した(速報記事)。同製鉄所には二つのコークス炉があり,火災が発生していないコークス炉では損傷などは確認されていないが,点検などのため稼働を停止している。高炉では,コークスを使い鉄鉱石から銑鉄を得ている(鉄の還元反応)が,その際に1000℃近い高温空気を必要とする。この高温空気を作るのに,コークス炉で生じる可燃性のコークスガスを利用していたが,コークス炉がすべて稼働を停止してしまったため,原料の鉄鉱石やコークスは十分にある状況だったにもかかわらず,高炉を止めなければならない状況だった。

 しかし,同製鉄所の近隣にある三井鉱山のコークス炉からコークスガスの供給を受けられることになったので,このコークスガスを使って高温空気の送風を再開。高炉再稼働に向けた準備が進んでいるという。三井鉱山では,このコークスガスを蒸気タービン発電のための燃料として利用していたが,一時的に新日鉄八幡製鉄所に優先して回すように切り替えている。

早期再開を可能にした「休風」状態

 このように,それほど時間を置かずに高炉の稼働を再開できるのは,高温空気の送風を完全に停止していたわけではなく,高炉内部の鉄が固化しない程度に制御する「休風」状態を維持していたからだ。休風は,メンテナンスなどのときに使われる運転形態である。自動車に例えると,エンジンを完全に停止したのではなく,アイドリングを続けていたようなものだ。火災直後にコークス炉を停止してしまったので,高炉をフル稼働させるのに必要な量の高温空気は確保できなかったが,休風状態を当面続けることは可能だった。