――文化庁の調整案は録音と録画がセットになっている。それは権利者としては譲れないのか。音楽CDからの録音と無料放送の録画を別々に合意するという考え方はあり得るのか。

椎名氏 文化庁調整案は一体になっている。何度も言うが,文化庁調整案が権利者として最大の譲歩点。それ以外は考えていない。

「制度は既にある。それを正常化する」

――今後,権利者として事態の打開のためにどのような手を打っていくのか。

椎名氏 打開すると言うより,補償金制度が正常に機能するために,何らかの努力をするしかない。制度は既にある。いま正常に機能していないならば,それを機能するようにする方法を考える。例えば運用を変えていくといった方法はあると思う。

 文化庁の調整案はあくまで今回,妥協的な結論を得るために設定されたもの。それを1回リセットする必要はあると思う。もし録録小委を今後も存続させてこの議論を続けるなら,(2007年10月までの議論を両論併記でまとめた)「私的録音録画小委員会中間整理」を出発点にすべきだろう。

 世間的には補償金制度に対する反発が強いことは承知している。だが,コンテンツをどう生かすかを考えたとき,今後むしろクローズアップされていく制度だというのがボクの持論。ある程度の自由を認める代わりに薄く広く取る制度を残しておくべき。

 この場合の「ある程度」には確かに立場による見解の相違があって,ダビング10の議論であれば,EPNがそうだと思っている人はいるし,我々は枚数制限が必要と思っている。そういう見解の相違はあるけど,言っていることの本質は同じだと思っている。

 2年前は「補償金制度? 何ですかそれ?」だったことを思うと,この問題が広く報道されたことで,賛成・反対も含めて広く議論されたこと自体は良かった。一般的な理解もかなり深まってきている。補償金制度はそういう段階を経る必要があったと理解している。それを踏まえて今ある制度が正常に機能するように今後もがんばっていく。