米Apple Inc.は,開発者向けイベント「Worldwide Developers Conference 2008(WWDC 2008)」で, 同社の「Mac OS X」の次期バージョン「Snow Leopard(開発コード名)」も発表した(発表資料)。アプリケーション・ソフトウエアの開発者がマルチコア型マイクロプロセサの演算性能を引き出しやすくするための機能「Grand Central」(開発コード名)を提供するほか,グラフィックス描画処理LSI(GPU)を汎用計算に用いる,いわゆる「GPGPU」に対応することも表明。GPUで汎用計算を行うアプリケーション・ソフトウエアの開発には,C言語を拡張した新しい言語「OpenCL(open computing language)」を利用する。

 発表資料によると,Snow Leopardは,新機能の追加よりもOS Xの性能向上や今後の基盤となる技術の整備に重点を置くという。発表資料で,Apple社,vice president of Software EngineeringのBertrand Serlet氏は,「優れたユーザー体験を提供する努力の一環として,我々は新機能の開発では一時停止ボタンを押し,最先端のOSを完璧に近づけることに注力する」と表明した。

 同社は2007年4月,OS Xに基づく「iPhone software」の開発に力を注ぐため,Mac OS Xバージョン10.5(開発コード名Leopard)の出荷を4カ月遅らせると発表したことがある(Tech-On!関連記事)。今回もiPhone softwareの開発のために開発資源を集中した結果,Mac OS Xの新機能の開発を抑制したのかもしれない。

 今回Apple社は,多くの企業が利用する米Microsoft Corp.のメッセージ・ソフトウエア「Microsoft Exchange 2007」に,Snow Leopardで初めて対応することを明らかにした。同社は,iPhone 3Gが採用する次世代のiPhone softwareでも「Microsoft Exchange ActiveSynch」への対応を表明し,iPhoneが企業でも利用できることをアピールしている。Snow Leopardで,Apple社は企業向けパソコンの市場開拓を目指す可能性がある。