図1 ストリーミング形式のVODサービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
図1 ストリーミング形式のVODサービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
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図2 ダウンロード形式のVODサービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
図2 ダウンロード形式のVODサービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
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図3 自主放送番組のIP放送サービスおよび地上デジタル放送のIP再送信サービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
図3 自主放送番組のIP放送サービスおよび地上デジタル放送のIP再送信サービスの概念図(IPTVフォーラムの資料)
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図4 IPTVフォーラムが定めた技術仕様案の構成(IPTVフォーラムの資料)
図4 IPTVフォーラムが定めた技術仕様案の構成(IPTVフォーラムの資料)
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図5 技術仕様案が規定する要素技術一覧。配信サービスに関する仕様と,サービス手段に関する仕様で,サービスを利用するための手続きやコンテンツの再生などに利用する各種の技術を規定した。例えばコンテンツを案内する画面は,インターネットを利用するサービスはIPTV用HTML,CDNを利用するサービスはIPTV用BMLで記述することになる(IPTVフォーラムの資料)
図5 技術仕様案が規定する要素技術一覧。配信サービスに関する仕様と,サービス手段に関する仕様で,サービスを利用するための手続きやコンテンツの再生などに利用する各種の技術を規定した。例えばコンテンツを案内する画面は,インターネットを利用するサービスはIPTV用HTML,CDNを利用するサービスはIPTV用BMLで記述することになる(IPTVフォーラムの資料)
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 通信事業者や放送事業者,機器メーカーらで構成する「IPTVフォーラム」は2008年6月9日,IPTVサービスの受信機に関する技術仕様案をまとめたことを発表した。この技術仕様案は,IPマルチキャスト技術を用いた放送サービスと,ストリーミングやダウンロードで再生するVODサービスを想定する。この技術仕様に則って受信機を開発することにより,例えば「アクトビラ」や「ひかりTV」などのサービスに対応できるようになる。任意団体であるIPTVフォーラムは今回の成果を新たに発足する規格団体に引き継ぎ,その規格団体が受信機仕様の確定やメンテナンス作業を進める計画である。「2008年6月中に新しい団体の設立について発表する予定」(IPTVフォーラムの事務局)とする。

個別に進めてきた議論を統合

 IPTVフォーラムは2006年10月に設立された団体で(Tech-On!の関連記事),これまで個別に議論してきたIPTV関連サービスの複数の技術仕様を持ち寄り,IPTVサービスの統合仕様の検討を進めてきた。具体的には,オープンなインターネット経由でコンテンツ配信を行うことを想定し,松下電器産業やソニーなど大手テレビ・メーカーを中心とした「デジタルテレビ情報化研究会」が策定した仕様,クローズなIP網で映像配信を行うことを想定し,NTTなどの通信事業者が主導した「IPSP(IPサービスプロジェクト)」での検討成果,家庭での蓄積を前提とする「サーバー型放送」サービスの実現に向けて「サーバーP(サーバー型放送運用規定作成プロジェクト)」がまとめた技術要件などを持ち寄った。なお,デジタルテレビ情報化研究会が策定した仕様はアクトビラで既に使われている。

 今回IPTVフォーラムがまとめた技術仕様案は,(1)ストリーミングによるVODサービス(図1),(2)受信機や記録媒体に一時的に蓄積してから再生するVODサービス(図2),(3)自主放送番組のIP放送サービス,(4)地上デジタル放送のIP再送信サービス(図3),の4種のサービス形態を想定する。(3)と(4)は,映像コンテンツの配信などに最適化した「CDN(contents delivery network)」と呼ぶネットワークで配信する。また(1)と(2)は,CDNおよびインターネットの両方での配信を想定する。

サービス事業者が個別に選択する部分も残す

 2380ページにおよぶ技術仕様案は,六つの仕様と,一つの規定で構成する(図4)。六つの仕様は,配信サービスに関する「VOD仕様」「ダウンロード仕様」「IP放送仕様」と,サービス手段に関する「放送連携仕様」「インターネットスコープ仕様」「CDNスコープ仕様」である。規定として「IP再送信運用規定」を定義した。「受信機を開発する場合,この六つの仕様の全部に対応しても良いし,一部だけに対応しても良い」(IPTVフォーラムの担当者)。また仕様全体の方針として,「CDNと受信機間のインタフェースを規定することで,CDNの違いを吸収できるようにした」(同)という。

 今回の技術仕様案は,IPTVサービスの事業者が個別に選択する部分も残した。その一つがDRM(digital rights management)技術である。DRM技術の要件のみを技術仕様で定め,それに適合したDRM技術をサービス事業者が選択するようにした(図5)。実際の受信機開発において,この技術仕様のどの部分に対応させるか,サービス事業者ごとに異なる部分をどう実装するかなどは,機器メーカーの判断に委ねられることになる。

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