2008年5月13日に行われた「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委)」(情報通信審議会の下部組織)の第37回会合では,ダビング10の実施に関する審議(Tech-On!関連記事1)のほかに,地上デジタル放送(地デジ)の著作権保護ルールを遵守させるための方策(いわゆる「エンフォースメント」)についても議論された。

 この議論では,権利者や消費者系の委員から現行の「B-CASカード」と放送の暗号化(スクランブル)を使ったいわゆる「技術的エンフォースメント(TE)」をやめて,罰則規定を含む法律を定めることで,ルールの遵守を期待するいわゆる「制度的エンフォースメント(LE)」への移行を望む意見が改めて出た。これは法規制の導入と引き替えに,現在行われている地デジ放送の暗号化を止めることを意図する意見である。

 これに対し,主にメーカー系の委員からはLEの導入に難色を示す意見が相次いだ。メーカー系の複数の委員は,経済産業省(当時は通商産業省)の産業構造審議会(産構審)が1999年2月に公表した報告をその根拠とした(「産業構造審議会知的財産政策部会デジタルコンテンツ小委員会及び情報産業部会基本問題小委員会デジタルコンテンツ分科会合同会議報告書」へのリンク)。

フリーオの登場がきっかけ

 このような議論がデジコン委で始まったきっかけは,2007年10月に登場したパソコン向け地デジ放送チューナー「フリーオ」である。フリーオはパソコンに接続して利用するチューナーで,ユーザーが入手したB-CASカードと組み合わせることで,暗号を解除し,地デジ放送番組をコピー・フリーの形で録画できる(Tech-On!関連記事2)。

 現行の地デジなどは放送波を暗号化し,これを解除する暗号鍵を含むB-CASカードを,カードを管理するビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS社)と契約を結んだメーカーにだけ支給している。この契約によって,放送波に多重した権利保護情報に基づいて動作する受信機だけが市場に出回るようにする(B-CAS方式)。TEはこのような手段の総称である。