カーボン複合体の構造模型。白い玉はCNTを成長させるための触媒に相当するという。
カーボン複合体の構造模型。白い玉はCNTを成長させるための触媒に相当するという。
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左から,一般的なSiウエハー,CNTを成長させたSiウエハー,カーボン複合体を成長させたSiウエハー。
左から,一般的なSiウエハー,CNTを成長させたSiウエハー,カーボン複合体を成長させたSiウエハー。
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 富士通は2008年5月13日,同社のプライベート・ショーである「富士通フォーラム2008」(5月15~16日,東京国際フォーラム)の報道機関向け内覧会で,同社が開発,あるいは開発中の各種技術を出展した。

 「ナノテクノロジー」のコーナーで同社が出展したのは,次世代半導体の配線やトランジスタを構成する材料として有力な候補である「カーボン複合構造体」。炭素原子から成る2次元シートであるグラフェンから,カーボン・ナノチューブ(CNT)が多数生えた構造の材料である(関連記事)。

 富士通はこのカーボン複合体のうちCNTの部分をLSI中の縦の配線に,グラフェンの部分を横の配線に使い分けたり,あるいは放熱用途などに利用することを想定する。CNTは一般に成長させる位置や長さの制御が難しいが,このカーボン複合体では「CNTが生える位置が(グラフェン上と)決まっているので,後は成長時間の制御だけで長さをそろえることができる」(富士通 ナノテクノロジー研究センター 主任研究員の大淵真理氏)というメリットもある。

 同社によれば,このカーボン複合体は,「Siウエハー上でCNTを成長させる実験をしていたところ,本来,つや無しの黒色になるはずのウエハーに,薄い金属光沢を持つものが見つかった」(同社)ことから発見できたという。今回,同社は(1)Siウエハー,(2)CNTだけを成長させたSiウエハー,(3)カーボン複合体を成長させたSiウエハー,をそれぞれ出展し,それらの違いが一目瞭然であることを示している。

 カーボン複合体に金属光沢があるのは,グラフェンの層の自由電子の密度が高く,可視光の大部分を反射するため。グラフェンが数層しかない非常に薄い場合でも,金属光沢が十分確認できるという。