図1:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の電子顕微鏡像[a]と,グラフェン部分の電子顕微鏡像[b]
図1:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の電子顕微鏡像[a]と,グラフェン部分の電子顕微鏡像[b]
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図2:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の図
図2:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の図
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図3:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の,予想される複合構造
図3:富士通研究所が合成した新しいナノカーボン複合構造体の,予想される複合構造
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 富士通研究所は,カーボン・ナノチューブとグラフェンを接合した新しいナノカーボン複合構造体を,自己組織的に形成させることに成功した(発表資料)。今回発見した複合構造体は510℃で合成可能である。これは一般的なグラフェンの合成温度の約700℃よりも低いとする。グラフェンとは,炭素原子が六角形の網状に配列したもの。このグラフェンを積層したものがグラファイトになる。

 カーボン・ナノチューブの成長機構を解明するため,化学気相成長法による実験を行っていたところ,基板に対して垂直方向にそろって成長した多層カーボン・ナノチューブ上に,数層から数十層のグラフェンが自己組織的に形成された複合構造体が形成されたという。

 カーボン系材料は,炭素原子の結合の形によって、0次元構造のフラーレン,1次元構造のカーボン・ナノチューブ,2次元構造のグラフェン,3次元構造のダイヤモンドと多様な形態をとる。これまでに,0次元と1次元の複合構造体であるピーポッドが発見されているが,1次元構造のカーボン・ナノチューブと2次元構造のグラフェンが垂直に接合している複合構造体を実現したのは「世界で初めて」(同社)という。

 富士通研究所は今後,今回のナノカーボン複合構造体の形成機構を解明し,詳細な物性を明らかにすることで,その特長を活かした電子部品に応用する技術の開発を目指す。また,材料技術として,低温でのナノカーボン形成技術の開発も目指すとする。

 同社は今回開発した技術の詳細を,2008年3月3~5日に名古屋市の名城大学で開催されている「第34回フラーレン・ナノチューブ総合シンポジウム」(The 34th Fullerene Nanotubes General Symposium)で発表する。