図1 2008年3月期決算を発表するNTTドコモ 代表取締役社長の中村維夫氏
図1 2008年3月期決算を発表するNTTドコモ 代表取締役社長の中村維夫氏
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図2 2008年3月期決算と2009年3月期業績予想
図2 2008年3月期決算と2009年3月期業績予想
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図3 2008年度はブランド力の向上に努める
図3 2008年度はブランド力の向上に努める
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図4 決算説明会で示した「ホームエリア」のサービス構想。将来的には無線LANアンテナの代わりにフェムトセルを利用することも想定する
図4 決算説明会で示した「ホームエリア」のサービス構想。将来的には無線LANアンテナの代わりにフェムトセルを利用することも想定する
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図5 NTTドコモ特有のアプリケーション・ソフトウエアをまとめた「オペレータパック」で海外メーカーの参入を促す
図5 NTTドコモ特有のアプリケーション・ソフトウエアをまとめた「オペレータパック」で海外メーカーの参入を促す
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 NTTドコモは2008年4月25日,2008年3月期通期(2007年4月~2008年3月)の決算を発表した(図1)。売上高は前年度比763億円(1.6%)減の4兆7118億円,営業利益は前年度比348億円(4.5%)増の8083億円だった(図2)。新たな割引サービスの導入や携帯電話機の販売モデルの変更に伴って携帯電話収入が減少したものの,携帯電話機の販売収入の増加や代理店手数料の減少などによって増益を達成した。

番号ポータビリティの衝撃

 2008年4月18日に企業ブランドの刷新を発表したNTTドコモは,発表したばかりの新しいロゴを使った資料で2007年度の決算と2008年度の事業戦略を説明した(4月18日の発表資料)。「番号ポータビリティ制度の衝撃は大きかった。『このままではダメだ』という意識は多くの社員が持っていた」(同社 代表取締役社長の中村維夫氏)とし,2008年度はブランド力向上のためのマーケティング活動に力を入れていくとした(図3)。

 「国内全体では1億契約を超え,契約数の増加は見込めない状況になった。新しい技術や機能をキャリア主導で提案していく時代から潮目が変わったと感じている。当然ではあるが顧客満足度の向上を重視しなければならない顧客主導の時代になった」(同社 代表取締役社長の中村維夫氏)。5300万の顧客の満足度を高め,長期間にわたって使ってもらえるようにするという考えを示した。2008年度の取り組みとして言及した中で目を引いたのは,家庭内ネットワークと連携するサービスの提供を開始するというものである(図4)。無線LAN機能を搭載した携帯電話機を一般消費者向けに提供し,家庭内では高速なパケット通信などを利用可能にするというサービス構想を示した。具体的なサービス内容などは明かさなかったが,2008年度第1四半期に提供を開始するという。

オペレータパックは端末の差異化を阻害しない

 また2008年4月21日に発表した,iモードやiアプリといった同社独自の機能を実現するソフトウエア群「オペレータパック」については,海外の携帯電話機メーカーの参入を促進することが最大の狙いであると説明した(図5Tech-On!の関連記事)。「Nokia社やMotorola社,LG Electronics社がドコモに端末を供給したが,やはり最初は苦労していた。より単純な構造にすることで,海外メーカーの参入が容易になるし,将来的には端末価格の低減にもつながるだろう」(中村氏)。携帯電話機メーカーの差異化を阻害するのではないかという記者からの質問に対しては,「iモードを中心にNTTドコモのノウハウをまとめた部分がオペレータパックであり,タッチ・パネルの利用や各種のソフトウエアによる使い勝手の向上,外観デザインによる差異化など,携帯電話機メーカーが工夫できる部分は多くある」(中村氏)と答えた。

割引サービスや販売モデルの変更が影響

 2007年度末決算の詳細は以下の通り。「ファミ割MAX50」などの新たな割引サービスや,携帯電話機の販売で割引をしない代わりに基本使用料を安くする「バリューコース」の導入に伴い,2006年度に比べて収益構造が大きく変化した(Tech-On!の関連記事)。

 携帯電話収入は4兆1826億円で,前年度から1636億円(3.9%)減少した。2008年3月末における携帯電話サービスの契約数は,前年度末比76万7000(1.5%)増の5338万8000。1契約当たりの月間平均収入は6360円で,前年度の6700円から5.1%減少している。

 バリューコースの導入によって携帯電話機の販売奨励を目的とした代理店手数料が減少したため,収益連動経費が1528億円減少した。営業費用は前年度比1111億円(2.8%)減の3兆9035億円だった。また,携帯電話機の販売収入が5466億円と726億円(15.3%)増加した。ただしバリューコースでは携帯電話機の購入代金の分割払いも受け付けているため,今後フリー・キャッシュ・フローが減少する見込みである。2008年3月期は4424億円だったが,2009年3月期は800億円と予想する。

 2009年3月期通期の業績予想は,売上高が1.2%増の4兆7680億円,営業利益が2.7%増の8300億円である。契約数は108万2000増の5447万を見込む。1契約当たりの月間平均収入は5640円と約5%下がるものの,携帯電話機の販売収入が9650億円に増加するとみている。