左はOMS Videoで符号化されたSDTVの動画を再生している様子。右はH.264で符号化された同一の動画。Sun社によると,現在の開発段階では,OMS Videoで符号化された後の動画データ量はH.264に比較すると40%多い。
左はOMS Videoで符号化されたSDTVの動画を再生している様子。右はH.264で符号化された同一の動画。Sun社によると,現在の開発段階では,OMS Videoで符号化された後の動画データ量はH.264に比較すると40%多い。
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OMS Videoの基本の構成
OMS Videoの基本の構成
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Sun社が目指しているOpen Media Stack(下右の黄色部分)と独自技術の例の比較
Sun社が目指しているOpen Media Stack(下右の黄色部分)と独自技術の例の比較
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 米Sun Microsystems , Inc.は,オープンソースによる動画符号化技術の開発プロジェクトの存在を明らかにした。同社が2008年4月10日(米国時間)に米メンロパーク市の本社で開催した「2008 Sun Labs Open House」で公開したもの。H.264と同等の符号化率の実現を目指しているという。

 開発プロジェクトの名称は「OMS Video」(仮称)。OMS Videoは,Sun社が支援しているオープンなメディア環境を目指す「Open Media Commons」(同プロジェクトのWebサイト)において,動画配信のロイヤルティを不要にするためのソフトウエア技術開発プロジェクト「Open Media Stack(OMS)」の一部として位置づけられている。

 Sun社は,OMS Videoに取り組む一つの理由として,W3Cが策定中の「HTML 5.0」への適用を挙げた。「HTML 5.0が普及するためには,オープンソースによる動画符号化技術が欠かせない。W3Cもこの点を課題と認識している」(同社,Global Alliance Manager, TV & MediaのRob Glidden氏)。Sun社はこうしたインターネット上の動画配信環境において,オープンソース動画符号化技術が非常に重要になると考えている。

 同社は,OMS Videoが他者の特許を侵害していないかどうか,徹底的に調査している。OMS Videoの開発ベースには,H.261の動画符号化技術を用いている。「H.261は1988年頃に開発されたもので,現在は特許が失効している」(Sun社)。Sun社は既にオープンソースによるDRM技術「DReaM」(Tech-On!関連記事)を開発した経験があり,知的財産を侵害しないようにオープンソースの技術を開発する手法に長けていると主張する。

 オープンソースによる符号化技術の開発プロジェクトとしては既に,英British Broadcasting Corp.が支援するウェーブレット技術を用いる「Dirac」と,米On2 Technologies, Inc.の「VP3」技術に基づく「Theora」がある。「我々は,各プロジェクトに参加している開発者に既に連絡を取っていて,今後に喜んで一緒に協力をするつもり」(Sun社のGlidden氏)。

 Sun社は今後6カ月以内に,OMS Videoの基本機能を完成させる予定。なおソースコードの公開には,CDDL(Common Development and Distribution License)のライセンスを採用する。