東芝 セミコンダクター社 社長の齋藤昇三氏が2008年4月18日,IDEMA JAPAN(日本HDD協会)開催のセミナーに登壇し,NANDフラッシュ・メモリやSSD(solid state drive)の将来展望について語った。講演の中で同氏は「ノート・パソコンのSSD搭載比率は2011年に25%」との予測を掲げた。

 東芝のフラッシュ・メモリ事業の基本戦略は,生産能力の増強と,微細化や多値化によるコスト低減。東芝はNANDフラッシュ・メモリの市場規模が2006年~2010年の年平均成長率で133%と急拡大するとみており,同社の生産規模はこれをさらに上回る勢いで増強していくという。

 微細化に関しては43nmプロセスによる量産を2008年3月に始めており,2009年末ごろから30nm世代のプロセスでの量産を立ち上げる計画という。多値化技術の導入状況は,2008年3月に3ビット/セル品の量産を開始して,現在は4ビット/セル技術を確立しようとしている段階。こうした技術開発により東芝は今後,NANDフラッシュ・メモリの容量当たりの製造コストを年平均で40~50%低減していくとする。

 NANDフラッシュ・メモリの需要の伸びが最も期待できる市場として,東芝はノート・パソコン向けを挙げる。ノート・パソコン向けSSDの世界市場規模は2008年~2011年に年率313%増の成長を遂げると同社は予測する。現在,東芝のSSD製品系列は32Gバイト~128Gバイトだが,将来は512Gバイトまで拡張する計画。齋藤氏は「ノート・パソコン用メモリの512Gバイト以下をSSDが担い,それより大きいものをHDDが担うという棲み分け」を思い描いている。ノート・パソコンのSSD搭載比率は2010年に10%,2011年に25%を見込む。

 パソコンにSSDが採用されるための課題としては一般に,SSDのMLC(multi level cell)品は書き換え限度回数が1万回程度と少ないことが挙げられる。これについて齋藤氏は「書き込みデータをキャッシュに集めて効率よく書き込み,書き換え頻度を抑えれば,ヘビー・ユーザーがSSD搭載パソコンを5年使っても書き換え回数は1万回をはるかに下回る」との試算結果を示した。

 HDDに対する価格面での不利も,徐々に小さくできると齋藤氏は語る。東芝の推定ではNANDフラッシュ・メモリの1Gバイト当たりの単価は現在,1.8インチHDDの2.9倍,2.5インチHDDの6.4倍という。しかし今後,年率50%でNANDの価格を下げた場合,2011年には1.8インチHDDの1.4倍,2.5インチHDDの3.2倍と価格差は縮まる見通しとした。

(日経エレクトロニクス2008年4月21日号では,東芝の半導体事業を分析した「東芝の勝算」を掲載しています。)

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