図1:会見したArianespace S.A.の会長兼CEOであるJean-Yves Le Gall氏
図1:会見したArianespace S.A.の会長兼CEOであるJean-Yves Le Gall氏
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 衛星打ち上げサービス大手Arianespace S.A.の会長兼CEOであるJean-Yves Le Gall氏は「今後,日本企業から請け負う商業衛星の打ち上げは,HDTV放送やブロードバンド・サービスに向けたものが期待できる」とした。2008年4月10日に開かれた定例記者会見のなかで語った。

 Arianespaceは,毎年12機程度の商業衛星(主に放送衛星や通信衛星)を打ち上げている。このうち日本企業から依頼を受けるのは毎年1機程度だが「日本のように安定して衛星の打ち上げをしている国はない」(同社マネージャーのJacques Roelandts氏)。同社が米国の次に重視している市場だという。

 Arianespaceは,2008年と2009年にも1機ずつ日本の衛星を打ち上げる。2008年夏に打ち上げる衛星は宇宙通信の「Superbird 7」。現行の通信衛星「Superbird C」(東経144度)の寿命切れにともなう代替機である。同社はこの衛星を,主にケーブルテレビの事業者向けに利用するという。海外のコンテンツ提供会社が,通信衛星を使って日本の放送事業者に番組を配給する「HITS (Headend In The Sky)」と呼ばれるサービスにも利用する。

 2009年夏には,JSATの通信衛星「JCSAT-12」を打ち上げる。こちらは「JCSAT-R」の後継機として,スカイパーフェクト・コミュニケーションズが提供する多チャンネル放送サービス「スカイパーフェクTV!」(124/128度CS放送)に使用している衛星2機の予備衛星となる。

 通信衛星を利用したブロードバンド・サービスとしては,米BBSAT社が宇宙通信の衛星「Superbird B2」を利用して,2009年度のサービス開始を予定している(Tech-On!関連記事)。この衛星の寿命が2015年前後に切れるため,宇宙通信は2013~2014年をめどに後継機を打ち上げる予定だという。ただし,打ち上げを行う企業はロケットの性能や安定性,経済的な合理性などを考慮してこれから選ぶという。

 Arianespaceの打ち上げビジネスのマイナス要因としては,衛星の長寿命化が挙げられる。JSATによれば,同社が89年に第1号機を打上げた際には10年程度だった衛星の寿命が,現在では15年ほどになっているという。これは,衛星のサイズが大きくなり,より多くの燃料やバッテリを搭載できるようになったこと,放送のデジタル化によって使用する周波数帯域が狭くなり,燃料をより効率的に利用できるようになったことが大きな要因だという。

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