米BBSAT社とタイのShin Satellite Public Co., Ltd.は,それぞれ個人向けの衛星インターネット接続サービスを日本で開始する。どちらもユーザーからの送信(上り)にも衛星を用いるのが特徴。このうちBBSATのサービスは下り2Mbpsでの通信が可能なため,ブロードバンド・ゼロ地域解消の「落とし所」として注目が集まりつつある。

 BBSAT社は,宇宙通信の通信衛星「Superbird B2」を利用し,上り512Kbps,下り2Mbpsのサービスを予定している。宇宙通信 事業カンパニーの事業戦略室長である松藤浩一郎氏によると,一世帯あたりの月額料金としては5000~9000円を見込む。2008年夏に実証実験を行い,サービス開始は2009年度を予定している。BBSATは近く日本法人を設立する。

 一方,タイの大手衛星通信会社Shin Satellite Publicは,複数のインターネット接続事業者(ISP)を通じてサービスを提供する予定である。同社は,一世帯あたりの月額料金を下り1Mbpsのプランで4000円(ISPによるインターネット接続料金を含む),同512Kbpsのプランで3000円(同)と推定している。ISPによっては1カ月間に通信できるデータ容量に上限を設定する場合も考えられるという。同社の子会社IPSTAR Co., Ltd.が2008年春に日本事務所を開き,同年10~12月にサービスを開始する予定だ。

ブロードバンド・ゼロ地域の解消にも

図1:ブロード・バンド未提供地域の類型。国土交通省の画像を引用したもの。
図1:ブロード・バンド未提供地域の類型。国土交通省の画像を引用したもの。 (画像のクリックで拡大)

 総務省は「2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会」を実現するという目標を掲げている。2007年3月末時点で,ADSLやFTTHといったブロードバンド・サービスを利用できない市町村の数は全国1843のうち25と,ブロードバンド・ゼロの自治体は急速に減ってきてはいる。これからは「市町村単位ではなく集落単位といった数パーセントの視点から考える問題」(ブロードバンド推進協議会)になりつつある。後に残っているのは市町村の中でも山間部に点在する集落や離島など,事業として最も採算が取りにくい地域というわけだ。

図2:新潟県内におけるブロード・バンド未提供地域の状況。
図2:新潟県内におけるブロード・バンド未提供地域の状況。 (画像のクリックで拡大)

 だが,人口の少ない地域に向けて,光ファイバーやWiMAXの基地局といったインフラを整備することは難しいという声も出てきている。例えば,新潟県はブロードバンドの整備困難地域にアクセス回線として無線LANやWiMAXを使ったブロードバンド・サービスを提供した場合の月額料金を試算した*1

*1: 「次世代無線ブロードバンド新潟モデル調査研究会」における調査結果をふまえ,新潟県が試算したもの。同研究会は,離島や山間地など「条件不利地域」におけるブロードバンド導入モデルの確立を目指して2006年に設立された。