大阪大学や村田製作所などが開発したメタマテリアル。TiO2の立方体を120μmピッチで配列した。写真提供:大阪大学 特任研究員の渋谷享司氏。
大阪大学や村田製作所などが開発したメタマテリアル。TiO2の立方体を120μmピッチで配列した。写真提供:大阪大学 特任研究員の渋谷享司氏。
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 大阪大学 レーザーエネルギー学研究センターの萩行正憲氏の研究グループ,村田製作所,東北大学 大学院工学部および,日本大学工学部は,周波数が300GHz(波長約1mm)前後の「テラヘルツ波」と呼ぶ電磁波に対応したメタマテリアルを共同開発した。第55回応用物理学関係連合講演会(2008年3月27~30日,日本大学理工学部 船橋キャンパス)で発表した。テラヘルツ波かそれ以上の周波数の電磁波に対応したメタマテリアルの開発は,海外でいくつか例があるが日本では初めてである(関連記事)。

 メタマテリアルは,電磁波の波長よりも小さい構造を金属や誘電体などで構成した人工的な伝送媒体。媒体中の電磁波の性質を決める誘電率εや透磁率μの実効値を設計でき,しかも従来の材料では得られない値にできる点で,材料メーカーなどが注目している。特に,εとμが同時に負の値,つまり屈折率が負の「左手系メタマテリアル」を開発できれば,「Veselagoレンズ」という回折限界を超えて完全な焦点が得られるレンズや,特定の波長帯の電磁波が反射も散乱も吸収もされずに透過する「透明マント」などが実現する可能性がある(関連するNEブログ)。

 阪大などが開発したメタマテリアルは,1辺が90μmの酸化チタン(TiO2)の立方体を120μmの周期でAl2O3基板上に2次元的に配列したもの。300GHz前後のテラヘルツ波を基板の法線方向に伝播させると,周波数が280GHz付近で実効的なμの値が負になる。周波数が375GHz付近では,実効的なεの値が負になるという。まだεとμの値を同時に負にすることには成功していないが,「TiO2の立方体の大きさに変化をつけることなどで,同じ周波数帯でμとεを同時に負にできる見通しがついた」(大阪大学 特任研究員の渋谷享司氏)としている。