日立マクセルは,燃料電池の電極に用いる酸素還元用触媒として,粒子の直径が2~3nmで,Pt(白金)に比べ単位面積当たり最大約4.8倍の酸素還元電流を発生するAuPt(金白金)触媒を合成する技術を開発した(発表資料)。

 現在,固体高分子型燃料電池の空気極(カソード極)側での酸素還元用触媒として,一般的にはPtをカーボン担体上に担持させたものを使う。触媒の活性を高めるには,Ptの粒子サイズを微細化して表面積を増やすことが有効である(Tech-On!関連記事1同2)。また,PtにFeやCo,Niなどの金属元素を添加することにより,酸素還元活性が高まることが知られている。しかし,燃料電池の電極付近は強い酸性状態であるため,Feなどの酸に溶解しやすい金属は,発電中に溶解してしまう問題があった。

不十分な合金化と微粒子化が高活性に寄与

 日立マクセルは今回,酸に溶けにくいAuをPtに添加した材料を開発した。AuとPtは合金を形成しにくい。Auは大きい粒子に成長しやすい特性があり,直径が5nm以下の粒子を合成することは困難だった。クエン酸を還元剤とし,100℃でAuとPtを合成したことで,粒子の直径が2~3nmと小さい触媒を開発できた。X線回折法で分析したところ,AuとPtが十分に合金化していない構造が判明したという。今回開発したAuPt触媒は,Pt触媒に比べ,水素基準電位0.6Vのときに単位面積当たり約4.8倍の酸素還元電流を実現した。同社では,AuとPtが十分に合金化していない構造と,微粒子化が高活性に寄与したと推測している。

 日立マクセルは今回開発した技術を,固体高分子型燃料電池やダイレクト・メタノール型燃料電池(DMFC)に応用するための研究開発を進めていくとしている。同社は今回開発した技術を,3月28~29日に東京のタワーホール船堀で開催されている第101回触媒討論会で発表する。

カーボン担体に担持させたAuPt触媒の電子顕微鏡写真。黒色から灰色の粒子がAuPt触媒で,薄い灰色部は担体のカーボン。AuPt触媒の粒径は2〜3nm。
カーボン担体に担持させたAuPt触媒の電子顕微鏡写真。黒色から灰色の粒子がAuPt触媒で,薄い灰色部は担体のカーボン。AuPt触媒の粒径は2〜3nm。
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同じカーボン担体に担持させた市販のPt触媒とAuPt触媒の酸素還元活性の比較。酸素還元電流を触媒の単位表面積で規格化して比較した。AuPt触媒は水素基準電位0.6Vのときに市販Pt触媒の約4.8倍の酸素還元電流が得られた。
同じカーボン担体に担持させた市販のPt触媒とAuPt触媒の酸素還元活性の比較。酸素還元電流を触媒の単位表面積で規格化して比較した。AuPt触媒は水素基準電位0.6Vのときに市販Pt触媒の約4.8倍の酸素還元電流が得られた。
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