端末と無線LANルータをセットで販売する
端末と無線LANルータをセットで販売する
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 パナソニック・コミュニケーションズは,Skypeに対応した無線LAN利用の電話機「KX-WP800」を2008年3月28日から発売する(Tech-On!の関連記事)。価格は2万9800円。海外出張の多いビジネス・パーソンや,電話利用料を低減したいユーザーなどに向ける。マーケティングを担当する 同社 新規事業開拓グループ キャリア事業開拓チーム チームリーダーの伊藤勝男氏と,設計開発を担当した 同社 共通開発センター IPプラットフォーム開発1グループ チームリーダーの志水郁二氏に,開発の狙いを聞いた。

――最大の特徴はどこか

伊藤氏 Skypeに対応した無線LAN利用の電話機は他社も手掛けている。当社の製品では,Ethernetのネットワークに接続するためのゲートウエイ装置「無線LANルータ」をセットにしていることだ。この無線LANルータが親機で,端末が子機に相当する。この親機と子機の間は,面倒な設定をせずとも無線LANですぐにつながる。「設定が不要」である点をウリにしている。
 我々は既に,米国や英国向けで同様の電話機を発売済みだ。しかし今回日本で発売する製品では,初めて「FON」に対応した。FONはユーザー参加型の無線LAN共有サービスで,日本に約6万人の会員と,約3万2000カ所の無線LANアクセス・ポイントがある。このため今回はFONにあらかじめ対応させることにした。米国や英国向けの端末は筐体色がシルバーだったが,日本向けはホワイトに変更した。

――どんなユーザーに向けるのか

伊藤氏 一番のユーザーは「トラベラー」だ。国内や海外に旅行した際に,Ethernetさえあれば,Skypeを使って無料もしくは低料金で音声通話できることを訴求したい。旅行に持って行きやすいように,親機(無線LANルータ)も小型/軽量にしている。その後,国際通話などが安くなるという認識が広がれば,家庭の一般ユーザーにも広がるのではないか。また,無線LANのアクセス・ポイントのある場所で,子機だけ使って音声通話するといった用途もありそうだ。

――なぜ,Webショッピング・サイト「パナセンス」のみで販売するのか

伊藤氏 SkypeユーザーやFONユーザーが主要顧客になる。いずれもパソコンを積極的に活用しているユーザーなので,Web上で販売したほうがいいだろうということになった。29800円という価格も,Web販売を中心とすることで実現した。ただし今後の販売動向を見据えて,販売手法などはさらに多様化させる可能性はある。

――機能は音声通話のみなのか

志水氏 開発中にはいろいろ議論があったが,今回は音声通話をメインの機能に据え,チャット機能などは省いている。もちろん,子機の画面を使って無線LANネットワークの検索などは可能である。暗号化に用いるキーの入力などもできる。
 子機には,動作周波数が150MHz程度のARM9系のコアを備えた専用ICを用いている。無線LANの送受信回路はモジュールではなく,米国メーカーのチップセットをメインボードに直付けしている。出力は+15dBm前後あり,見通しで80m程度の伝送距離を稼げる。 ちなみに子機の開発には, PHSの開発経験のある技術者なども携わっている。こうしたノウハウを注ぎ込むことで,小型/軽量の筐体でありながら,4.5時間の連続通話時間と55時間の連続待ちうけ時間を確保することができた。