MWCの発表会場では,NEC 執行役員社長の矢野薫氏が自ら登壇して説明した
MWCの発表会場では,NEC 執行役員社長の矢野薫氏が自ら登壇して説明した
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合弁会社は,LTEの研究開発のみに集中する
合弁会社は,LTEの研究開発のみに集中する
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緊急記者会見だったが,多数の報道関係者が詰め掛けた
緊急記者会見だったが,多数の報道関係者が詰め掛けた
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 NECは,仏Alcatel-Lucent社と広範な協業関係を構築すると発表した。その第1弾として,次世代移動体通信規格「LTE(long term evolution)」の研究開発に向け,合弁会社を設立する。LTEの研究開発をスピードアップし,携帯電話事業者の需要に迅速に対応することを目指す。Mobile World Congressの会場で共同記者会見を開催し,協業の背景などを説明した。

 合弁会社はLTEの研究開発のみにフォーカスする。両社合わせて1000名以上のエンジニアが,研究開発に携わる予定だ。設立時期や投資金額などは明らかにしていない。

 LTEに関しては,NTTドコモが「Super3G」という名称で2009年中のサービス開始を予定している。NECはその端末および無線基地局装置の開発・製造ベンダーとして選定されている(発表資料)。NECと仏Alcatel-Lucent社の合弁会社による研究開発は,NTTドコモ向け装置も対象になるという。なお,合弁会社が開発した無線基地局などの販売は,両社がそれぞれ個別に進める。

 LTE向け無線基地局システムの研究開発に関しては,フィンランドNokia Siemens Networks社やスウェーデンEricsson社も活発に取り組んでいる。NECが今回,仏Alcatel-Lucent社との協業に踏み切った理由について,NEC 執行役員社長の矢野薫氏は「最も相互補完できる相手だった。無線通信やIP技術など当社の強みを存分に生かせる合弁会社になる」(矢野氏)と語った。

 LTEは,NTTドコモが2009年中のサービス開始を表明しているものの,世界全体での普及はかなり先になる。NECはLTEについて「2015年で4億ユーザーの加入が期待されるという調査結果がある」と述べるなど,将来技術と認識している。にもかかわらず協業によってLTE開発を急ぐ理由は,「より早く,より良い商品を作るため。LTEは確かに先の話だが,ネットワーク・インフラとしては今から取り組む必要がある」(NECの矢野氏)。さらにその背景にある思いは,「『もっと海外へ』展開したい。かつてGSMを手掛けなかったことが,通信機器事業を世界へ展開する上で足かせになった。3Gの時代に入ってだいぶ挽回したものの,まだ我々が当初期待していた水準ではない。世界展開を有利に進めるには,他社との協業が不可欠と感じていた。Alcatel-Lucent社とは,以前から協業している面が多くあり,自然とこういう話につながった」(NECの矢野氏)。なおNECとAlcatel-Lucent社は,今後LTE以外でも様々な事業で協業していく方針である。