提携を発表したNTTドコモと米Google Inc.は,2008年1月24日に開催した記者発表会で,モバイル・インターネット分野に革新を起こす重要な提携であると説明した(図1Tech-On!の第一報)。「4800万の加入者を持つドコモと,世界最大の検索エンジンを持つGoogle社の連携で,より革新的なサービスの提供を目指す。『インターネットのモバイル化』を促進する」(NTTドコモ 取締役常務執行役員 プロダクト&サービス本部長の辻村清行氏)。「日本はモバイル・インターネットの発祥の地であり,NTTドコモは生みの親であるといえる。モバイル・インターネットの革新という面で大きな意味を持つ提携だ」(Google社 Senior Vice President, Global Sales & Business DevelopmentのOmid Kordestani氏)。

図1 2008年1月24日に開催した記者発表会の登壇者。左から順に,NTTドコモの夏野剛氏,Google社のOmid Kordestani氏,NTTドコモの辻村氏,Google社 副社長でグーグル 代表取締役社長の村上憲郎氏
図1 2008年1月24日に開催した記者発表会の登壇者。左から順に,NTTドコモの夏野剛氏,Google社のOmid Kordestani氏,NTTドコモの辻村氏,Google社 副社長でグーグル 代表取締役社長の村上憲郎氏 (画像のクリックで拡大)

図2 NTTドコモとGoogle社の提携の概要
図2 NTTドコモとGoogle社の提携の概要 (画像のクリックで拡大)

 今回の提携範囲として両社は,(1)ドコモのインターネット・サービス「iモード」における検索サービスの強化,(2)検索連動型広告の実施,(3)Google社が提供する各種のアプリケーションやサービスのiモード対応,(4)Google社が開発する携帯電話機向けソフトウエア基盤「Android」を採用した携帯電話機の商用化の検討,(5)iモードにおける新たなモバイル・マーケティング・サービスの検討を挙げた(図2)。

2008年春に検索サービスを刷新

 検索サービスの強化は2008年春に行う予定である。iモードの公式サイトの検索結果だけでなく,携帯電話機向けの一般Webサイトや,パソコン向けWebサイトの検索結果をまとめて表示するように変更する(図3)。この検索結果の画面に,検索語に連動した広告も表示する。同時に,iモードのポータル・サイトである「iMenu」のトップ画面に検索窓を新設する。「これまで一般サイトへは,提携している15社の検索エンジンや,URLの直接入力などでアクセスしていた。今回はそこへの導線を大きく変える。iモードのポータルから直接,一般サイトやPCサイトにリンクを張るようなイメージだ」(NTTドコモ 執行役員 マルチメディアサービス部長の夏野剛氏)。「トップ画面に検索窓を設置することで,検索回数やクリック数が増加するだろう。検索連動型広告による売上を,なるべく早いうちに100億円超に持っていきたい」(NTTドコモの辻村氏)とする。

図3 刷新する検索サービスのイメージ。ポータル・サイトのトップ画面に検索窓を設置する。検索結果は,iモードの公式サイト(図の右側の「A」の部分),携帯電話向けの一般Webサイト(同「B」),パソコン向けWebサイト(同「C」),検索連動型の広告(同「PR」)を一括して表示する
図3 刷新する検索サービスのイメージ。ポータル・サイトのトップ画面に検索窓を設置する。検索結果は,iモードの公式サイト(図の右側の「A」の部分),携帯電話向けの一般Webサイト(同「B」),パソコン向けWebサイト(同「C」),検索連動型の広告(同「PR」)を一括して表示する (画像のクリックで拡大)

 2006年にKDDIとの提携を発表したGoogle社は,KDDIのインターネット・サービスにおける検索機能の強化や,電子メール・サービス「Gmail」の技術の取り込みなどに協力してきた。NTTドコモの夏野氏は,「Google社との提携における他社との違いは,Google社のあらゆるサービスとの連携を強化していくことにある。検索エンジンや地図機能だけではない」と説明した。NTTドコモは既に発売済みの2機種(「N905i」と「F905i」)に,Google社の地図表示サービス「Google Maps」を利用できるiアプリ「モバイルGoogleマップ」をプリインストールしている。次世代の機種にはGoogle Maps用のアプリケーション・ソフトウエアをすべてに搭載する計画である。

「YouTube」や「Picasa」も想定

 今後の展開として夏野氏が示したのが,Gmail,写真共有サービス「Picasa」,動画共有サービス「YouTube」,スケジュール管理サービス「Google Calender」などとの連携強化である(図4)。Webブラウザから利用する形態と,事前に端末にインストールしたアプリケーション・ソフトウエアで利用する形態のどちらにするかは,機能や使い勝手を考慮しながら個々のサービスごとに判断していくという。

図4 携帯電話機から利用可能にするアプリケーション。まずGoogle Maps用のソフトウエアのプリインストールを進め,その後GmailやPicasa,YouTubeなどを利用できるようにする可能性があるとする
図4 携帯電話機から利用可能にするアプリケーション。まずGoogle Maps用のソフトウエアのプリインストールを進め,その後GmailやPicasa,YouTubeなどを利用できるようにする可能性があるとする (画像のクリックで拡大)

 Androidを採用した携帯電話機については,「NTTドコモがAndroidベースの携帯電話機を出すことを具体的に検討していく」(夏野氏)と表明した。Google社の各種サービスを利用しやすいように最適化した端末を検討するほか,Androidを使った端末でiモード・サービスを利用可能にすることも検討する。「Androidの試作機を見たが,やや貧弱なハードウエアでも軽快に動作することに驚いた。われわれが構築してきたソフトウエア基盤はかなり強固なものだと自負しているが,Androidから学ぶべきこともある。Androidを採用した端末の開発が,われわれのソフトウエア基盤のレベルアップにもつながるはずだ」(夏野氏)。

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