携帯電話機の液晶パネル用バックライトなどに使われる白色LEDの意匠権を巡り米国で争っていた,老舗LEDメーカーの日亜化学工業と新興メーカーの韓国Seoul Semiconductor Co., Ltd.。日亜化学工業が同社保有の意匠権4件が侵害されたとしてSeoul Semiconductor社を訴えていた訴訟について,2007年11月8日に陪審員評決が下った。

 日亜化学工業によれば,陪審員は同社の主張をすべて受け入れ,該当する米国意匠権すべてが有効であり,かつSeoul Semiconductor社の製品(「902」シリーズ)がこれら意匠権を侵害し,さらにその侵害は故意によるものであったと陪審員は認定したという(日亜化学工業の発表資料)。これに対しSeoul Semiconductor社は,該当する4件の意匠権のうち3件について損害賠償責任は発生せず,残る1件に関する損害賠償金額はわずかであったことから「事実上勝訴」と主張する(Seoul Semiconductor社の発表資料1)。

 日亜化学工業によれば,法定の最低金額である250米ドルに,故意侵害に基づく弁護士費用を合わせたものが損害賠償金額になる。今回の訴訟で挙がった米国意匠権は,「US D491538」と「US D490784」「US D499385」「US D503388」。このうち,US D491538について損害賠償の支払いを命ずる評決が出た。

 訴訟で争われた白色LEDの902シリーズとは,パッケージ側面から光を放射するサイドビューと呼ばれる形状の品種。サイドビュー・タイプの白色LEDは,液晶パネルのバックライトなどに使われる。Seoul Semiconductor社によれば,今回の評決で侵害の対象になった902シリーズは米国企業に提供した300個のサンプル品(販売額165米ドル)である。902シリーズは廃盤が予定される品種とする。

 今回の評決を受け,1~2カ月以内に判事による最終判決が下されるもよう。Seoul Semiconductor社は最終判決で仮に敗訴した場合,米国連邦巡回控訴裁判所に控訴し,非侵害と意匠権の無効を主張する方針である。

今度は,Seoul Semiconductor社が特許侵害で日亜化学を提訴

 今回評決が下った訴訟は2006年1月に,日亜化学工業が米国カリフォルニア州北部連邦地方裁判所に提訴したことで始まった(Tech-On!関連記事)。同社とSeoul Semiconducotor社の係争はこれにとどまらず,韓国や日本でも争われている。さらに最近では,Seoul Semiconductor社が同社保有の米国特許を侵害されたとして,日亜化学工業を米国テキサス州東部連邦地方裁判所に提訴した(Seoul Semiconductor社の発表資料2)。

 Seoul Semiconductor社が侵害されたと主張する米国特許は「US 5075742」である。半導体の層構造に関する技術であり,発光効率を改善できるとする。LEDのみならず,半導体レーザにも適用できる技術という。同社は,日亜化学工業が取り扱うLEDの全製品がこの特許を侵害していると主張している。

 携帯電話機向けで拡大し,今後はノート・パソコンや液晶モニター,大型液晶パネルのバックライト市場,さらには照明機器市場や車載機器市場など,白色LED市場は拡大基調が続くとみられる。巨大市場をにらみ,LEDメーカー間でクロスライセンス契約の締結など関係を強化する動きが広がっている。日亜化学工業やSeoul Semiconductor社はそれぞれ,他の大手LEDメーカーとの連携を強めてきた。そのような状況の中で日亜化学工業とSeoul Semiconductor社は,大手LEDメーカー同士では数少ない係争関係にあるといえる。新市場に向けたLED搭載製品を展開する戦略を立てる機器メーカーにとってLEDの調達という観点から,日亜化学工業とSeoul Semiconductor社の係争の行方から目を離せそうにない。

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