ソニー 執行役 副社長 セミコンダクタ&コンポーネントグループの中川裕氏
ソニー 執行役 副社長 セミコンダクタ&コンポーネントグループの中川裕氏
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 「この先,いくら最先端の論理プロセスに投資しても,作るモノが足りない」―――。ソニー 執行役 副社長 セミコンダクタ&コンポーネントグループの中川裕氏は,同社が長崎に保有する「プレイステーション3(PS3)」向けマイクロプロセサ「Cell」の生産設備を東芝に売却する理由について,このように語った(関連記事)。

 元々,ソニーではCellをPS3向けだけではなく,テレビやデジタル家電など幅広い機器に展開していくことで,生産ラインを埋める計画だった。ところが,PS3の販売台数が思ったほど伸びなかったことに加え,Cellそのものをゲーム機向けに設計したことで汎用性が失われ,異なる分野に展開することが難しくなったとする。その結果,生産ラインの稼働率を高く維持することが難しくなり,自前で生産する利点がなくなったという。最先端ラインをSiファウンドリのように運用すれば稼働率を高められるが,「ソニーがやることではない」(中川氏)と判断した。

 「はじめにCellありき」という考え方にも問題があったと同氏は指摘する。本来は,目的とする機器に合わせてデバイスを選択すべきで,Cellの活用が前提になるのでは「本末転倒」(同氏)とした。

 今後ソニーは,米IBM Corp.の米国工場内に保有している自社生産設備と,長崎に設立する東芝との合弁会社でCellを生産する予定。それぞれの拠点で45nm世代への微細化を進めれば,Cellの生産量を十分に確保できるという。

 研究開発に関しては,IBM,東芝と共に進めていた32nm世代のプロセス開発(関連記事)から手を引く。脱退する時期は決まっていないものの,2008年度中は共同開発を継続する見込みである。その後は特定の技術世代を目指さずに,最先端技術の研究開発を自社内で進める。これは,外部のSiファウンドリを利用する際にプロセス技術を評価できる能力を自社内に持つ必要があるとの判断による。

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