代表取締役社長の須藤民彦氏
代表取締役社長の須藤民彦氏
[画像のクリックで拡大表示]

 パイオニアの2007年7月~9月期(2007年第2四半期)決算は,売上高が前年同期比6.3%増の2005億円,営業利益が同79.6%減の9億円だった。中間期(2007年4月~9月)で見ても売上高は前年同期比0.7%増の3832億円と横ばいで,営業利益は80.7%減と大幅な減益。カーオーディオ製品,パソコン用DVDドライブなどは好調だったものの,PDPの損益悪化の影響が大きかった。

 第2四半期を主要セグメント別で見ると,カーエレクトロニクス部門は売上高が前年同期比10.9%増の927億円,営業利益が7.9%増の60億円である。カーナビゲーションの売り上げが国内では減少したものの,北米でのOEMが増えたことにより,全体的に増加。また,カーオーディオ製品の売り上げについては,市販市場向けが中南米やロシアで増えたとともに,OEMも国内,海外ともに増えたことで好調に推移した。ただし,カーナビゲーションはOEMの比率が高まったことなどで,原価率が悪化しているという。

 ホームエレクトロニクス部門は売上高が前年同期比4.6%増の894億円,営業利益は前年同期の37億円の損失から赤字額が増えて41億円の損失となった。不調だったのはPDPの影響である。PDPの売り上げは欧州市場は民生用が伸びたものの,国内や北米市場では民生用が減少するとともに,OEMおよび業務用は全体的に減少した。同部門におけるPDPの売り上げ構成比は,前年同期比の約47%から大きく下がって約41%となった。また,PDPを販売するための,新たなマーケティング施策にも大きな費用が掛かったため,損失額を増やすこととなった。一方で,パソコン用DVDドライブの売り上げは大きく伸びたため,部門全体では増収という形になった。

PDPの出荷台数を通期で大幅に引き下げ

 パイオニアは同時に,2007年度通期の業績予想に関して,修正したものを発表した。前回発表(2007年5月14日発表)時と比較して,売上高は150億円引き下げて8200億円,営業利益は50億円引き下げて100億円とした。2006年度の実績が売上高7970億円,営業利益125億円だったので,予想通りに推移すれば増収減益となる。

 下方修正の主因も,やはりPDPだ。ホームエレクトロニクス部門の通期の業績予想は,売上高が前回発表時と比較して160億円引き下げて3800億円,営業利益が80億円の損失としていたものを145億円まで損失が拡大するとした。「損失額が広がったのは,すべてPDPによるもの」(代表取締役社長の須藤民彦氏)。PDPの出荷台数は,72万台と予測していたものを56万台まで引き下げた。

 依然低迷しているPDP事業だが,「(競争の激しい市場において)高付加価値路線を追求することでパイオニアの存在感は示せている」(須藤氏)。実際に,市場に投入したばかりの新製品「KURO」は,コントラストの高さなどから評価が高いという(Tech-On!関連記事1)。ただし,「販売台数の増加につながっていない理由の一つとしてあるのは,こちらの提案する価値が消費者に受け入れられていないということ。価値を十分に認めてもらえるような体制にするなど,自分たちのあるべき姿を模索している最中」(須藤氏)という。「2008年度も黒字化するのは難しい」(同氏)と言いながらも「事業として絶対に存続していく」(同氏)ことを前提に,関連部門がお互いに連動しながらやるべきことを考えていくという。

 PDPの生産については,2008年度に生産効率の低い一部の生産ラインを稼働停止することを明らかにした。具体的には,静岡県袋井市にある年間約12万台の生産能力を持つ生産ラインの稼働を停止する。これにより同社のPDPの生産能力は年間約85万台になる。また,検討を進めていたPDPの新工場建設についても,建設を見送ることにした。

シャープとの協業は資本提携で本気を示す

 パイオニアは,シャープと業務提携および資本提携で合意したことを約1カ月前に発表したが,「現在は担当者同士で何ができるか検討を開始した段階」(須藤氏)という(Tech-On!関連記事2)。共同開発を進める分野としては,当初の予定通り次世代DVD関連製品,家電など向けネットワーク,カーエレクトロニクス,ディスプレイの四つ。ただし,「PDP事業を立て直すという点では,シャープとの提携はほとんど寄与しない」(同氏)という。

 今回の提携において具体的に何をしていくかという点においては,時期を見て明らかにしていく。「資本提携までしたというのは本気を示すことであり,取り組み方が違う」(須藤氏)という。過去において,シャープとパイオニアは業務提携を行ったことが何度かあったものの,いずれも成功したとは言えなかった。「どこまで担当者が本気で取り組んでいたかが疑問」(同氏)。資本提携により今回は提携の効果が必ずあると期待する。

この記事を英語で読む

ホームエレクトロニクス部門の通期の業績予想
ホームエレクトロニクス部門の通期の業績予想
[画像のクリックで拡大表示]