図1 太陽誘電が開発を進める誘電体膜を使ったガス・センサ。
図1 太陽誘電が開発を進める誘電体膜を使ったガス・センサ。
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 太陽誘電は,検出感度が1ppbのガス・センサを開発し,2007年10月2日に開幕した「CEATEC JAPAN 2007」で展示した。Siウエハー上に誘電体膜を形成したセンサで,同社では,ガスを吸着する仕組みから「ナノドメインガスセンサ」と呼ぶ。誘電体膜そのものの大きさは約80μm×500μmと小さく,センサ全体を小型化しやすいという。

 まずは半導体製造装置内の残留酸素を測定する場合など,インラインでの利用を想定する。現在,ppbレベルでの検出を行うのは工場設備の設置の際のみで,分析装置を使って残留ガスの濃度を試験しているという。同社では,今後,半導体の微細化の進展に応じてインラインでのガス検出の精度向上が必要になり,1~数ppbといった検出感度の高いセンサの需要が高まると見ている。

 今回開発したセンサでは,誘電体膜にガスが吸着すると誘電体膜の抵抗値が変化することを利用して,ガスを検出する。具体的な測定は次のように行う。誘電体膜に検出したいガスが吸着したところで,抵抗値を計測する。そして一旦誘電体膜を加熱して強誘電体から常誘電体に変化させ,ガスを放出させる。その後,再びガスを誘電体に吸着させ,抵抗値が先に計測した値まで戻る時間を測定する。ガスを誘電体に再吸着するまでの時間はガス濃度に逆比例するため,ガスの濃度が測定できる仕組みである。ガスの脱着による抵抗値の時間変化を測定することで,高い検出精度を実現できた。従来の半導体ガス・センサの場合も,ガスの吸着による抵抗値の変化を測定していたが,ガスの脱着の制御が難しく,抵抗値の時間変化を測定することは困難だったとする。

 今回展示したセンサの開発は,経済産業省の平成19年度(2007年度)地域新規産業創造技術開発費補助事業として採択されている。2009年のサンプル出荷を目指す。量産段階になれば,検出用の電子回路を含めて単価は数万円程度に収まると見ている。

図2 展示パネルの様子
図2 展示パネルの様子
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図3 センサの断面模式図(上)。誘電体膜はSrTiO3の部分である。多結晶Si(Poly Si)は誘電体膜へのガス脱着を制御するためのヒーター。誘電体膜が速く加熱できるように,誘電体膜下部分のSiウエハーはくり抜いて熱容量を小さくする。下の写真には,誘電体膜とその下の電極が写っている。
図3 センサの断面模式図(上)。誘電体膜はSrTiO3の部分である。多結晶Si(Poly Si)は誘電体膜へのガス脱着を制御するためのヒーター。誘電体膜が速く加熱できるように,誘電体膜下部分のSiウエハーはくり抜いて熱容量を小さくする。下の写真には,誘電体膜とその下の電極が写っている。
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