これまでにさまざまな「モデル」が登場したので,複雑だと感じた読者も多いだろう。今回はここまでのおさらいとして顧客モデルからシステムモデルまでの定義方法を簡単にふり返る。

アジレント・テクノロジー 電子計測本部 R&D プロセスコンサルティング
多田 昌人

 前回までに説明したように「システムモデル」は,「論理モデル」と「物理モデル」の2層から成る。前回は架空のプリンタ開発を例に「システムモデル」の一つである「論理モデル」の構築方法を説明した。次のステップはその実装解である「物理モデル」の作成なのだが,その前にこれまでの作業の流れを整理しておこう。

 まず,システム・デザインのゴールを再度確認しておく。最終的に目指しているのは,スペックや機能などの技術的な仕様(外部仕様)を基に,製品(システム)内部の構成要素とその依存関係を定義すること。内部の構成要素が決まれば,構成要素であるサブシステムの設計を始められる。展開したサブシステムの規模が大きいなら,必要に応じて同じくシステム・デザインの手法を適用して,小グループや個人で設計可能な範囲まで構成要素を細分化していけばよい。

 さて,これまでに「顧客モデル」「製品モデル」「システムモデル」の三つのモデルについて説明した(システムモデルは,さらに論理モデルと物理モデルとに分けられる)。それぞれのモデルの役割を,プリンタを例に簡単に言うと次のようになる。

●「顧客モデル」
 顧客が「印刷」という機能をどのように利用したいか,生活の中でどう使いたいかを,デジタル・カメラ,携帯端末などの周辺機器も含めて分析・定義する。プリンタの要求仕様書に相当する。

●「製品モデル」
「顧客モデル」の分析結果から,プリンタに対する具体的,定量的な要求が決まる。これを基にして,大きさ,性能,インタフェース,具体的なセットアップ方法,操作方法--など,プリンタに求められる機能を非機能要件とともに定義する。いわゆる外部仕様書に相当する。

●「システムモデル」
「製品モデル」で定義したプリンタの外部仕様を基に,システム内部の構成要素,構成要素間の依存関係を定義する。

■上位モデルを下位モデルでブレークダウン