米Apple, Inc.は音楽や映像などの配信サービスである「iTunes Store」で,英EMI Group plcの音楽関連部門EMI Musicの楽曲すべてをDRMによる保護なしで販売すると発表した(Apple社の発表資料EMI Groupの発表資料)。

 DRMによる保護なしで販売する楽曲は,これまでのiTunes Storeで販売してきた楽曲と同様にAAC形式で符号化したファイルで,符号化データ速度を従来の2倍となる256Kビット/秒にした。この高音質版でDRMなしの楽曲を,1.29米ドルで販売する。2007年5月から全世界のiTunes Storeで販売を開始する予定。DRMで保護した従来の価格の楽曲と,保護しない楽曲の両方を販売する。

「2007年末までに半分以上の楽曲をDRMフリー対応に」

 EMI Group社CEOのEric Nicoli氏は,同社の発表資料で「DRMによる保護なしでダウンロードできるようにすることによって,多くの音楽ファンに不満を抱かせていた互換性の欠如という問題を解決したいと考えた」とコメントした。EMI Group社は,DRM保護なしの楽曲をiTunes Store以外の音楽配信サービスにも提供していく考えである。

 Apple社は,DRMによって保護したEMI Musicの楽曲(128Kビット/秒,0.99米ドル)の購入者が,差額の0.30米ドルを支払えばDRMによる保護なしで256Kビット/秒の楽曲に変更できるようにする。Apple社CEOのSteve Jobs氏は発表資料で,「2007年末までに,iTunes Storeの半分以上の楽曲を,DRMによる保護なしでも提供できるようにしたい」という目標を示した。また,EMI Musicが提供するすべての音楽ビデオを,価格変更なしでDRMによる保護なしに変更する。

 今回両社がDRMによる保護なしでの楽曲販売に踏み切ったのは,これまでiTunes Storeで購入できるすべての楽曲が「FairPlay」と呼ぶApple社のDRMによって保護されており,購入者がiPod以外の携帯型音楽プレーヤで再生できないことに対して不満の声が上がっていたことが理由だったと見られる。Jobs氏は2007年2月に,音楽配信にはDRMが不要だとする考えを示した「Thoughts on Music」と題する文章を発表していた(Tech-On!の関連記事)。