ソニーは,「BRAVIA」ブランドの液晶テレビ新製品「J3000シリーズ」「J5000シリーズ」の全9機種を発表した(発表資料,図1,図2)。テレビ番組などの映像を視聴しながらWWWサイトと連携して情報を取得できる「アプリキャスト」機能を新たに開発し,全機種に搭載した。「視聴時間の約1/3を占める『ながら視聴』に向けた」(ソニー)。また,DLNAのクライアント機能を全機種に搭載した。「ネットワーク時代の新しいテレビの楽しみ方を提案する」(ソニー)のが最大の狙いである(図3)。
Amazon,楽天,Yahoo!,ソネットが「ウイジェット」提供
アプリキャストは,パソコンのデスクトップ画面に常駐させられる「ウイジェット」あるいは「ガジェット」と呼ばれる小さなアプリケーション・ソフトウエアを実行する仕組みと同様のものである。WWWサイトなどから情報を取得するソフトウエアを実行できる。これらのソフトウエアは,パートナー企業がマークアップ言語とスクリプト言語を使って開発し,ソニーのWWWサイトを通じて配布する。
ソニーのAV機器で共通のGUI「XMB(クロスメディアバー)」からアプリキャストを選択すると(図4),テレビ放送の映像を表示する範囲が狭くなり,右側にユーザーが登録したアプリキャストの一覧を表示する(図5)。この実行環境はソニーが独自で開発した。
アプリキャストで提供するアプリケーションとして,現時点で「Amazon.co.jp」および「楽天市場」の商品検索サービス,ソネットエンタテインメントのニュースや天気予報,写真共有サービス,「Yahoo! JAPAN」のオークション情報やトピックスの提供サービスなどが決まっている。
「acTVila」にも対応
J3000シリーズとJ5000シリーズでは全機種にDLNAクライアント機能(DLNAが定義する機器クラス「Digital Media Player」対応機能)を搭載した。DLNAサーバー機能(「Digital Media Server」対応機能)を持つ機器に格納した動画,静止画,音声のファイルを,家庭内のネットワーク経由でストリーミング再生できる。このほか,デジタルテレビ情報化研究会が定めた「ネットTV端末仕様書」に準拠するWWWブラウザーを搭載する。テレビポータルサービスが運営するテレビ向けポータル・サイト「acTVila(アクトビラ)」のコンテンツを閲覧できる。これまで,同仕様書に対応するソニーのテレビは既発売の「X1000シリーズ」の2機種だけだった。
J5000シリーズは,残像感を少なくするための機能も搭載した。映像のフレーム間を補間して,60フレーム/秒の映像から120フレーム/秒の映像を生成することによって実現した。また,映画フィルムのフレーム数である24フレーム/秒で記録したBlu-ray Discの映像を表示したときに,フレーム間に4フレームの補間映像を挿入して120フレーム/秒で表示する機能も備える。これによって,24フレーム/秒の映像を表示したときにコマ送りのように見えないようにした。
S-LCD製の10ビット対応液晶パネルを採用
今回採用した液晶パネルは,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.とソニーの液晶パネル製造合弁会社の韓国S-LCD Corp.が製造した初めての10ビット対応パネルだとする。従来の8ビット・パネルに比べて,各色の階調を4倍ずつ向上した(図6)。
これまでも,画像処理回路では12ビットなどの高階調での処理が行われていたが,映像出力を行う液晶パネルが10ビットのドライバICに対応できなかった。今回のパネルでは,10ビットの階調表現に堪えられる性能を実現できた。今後,10ビット対応パネルの採用が進むとした。
基本性能は,輝度が450cd/m2,視野角が上下左右178度,コントラストは,J5000シリーズ,J3000シリーズの40型と32型が1600:1,J3000シリーズの26型が1300:1,20型が1100:1である。また,全機種とも,映像に合わせてバックライトの輝度をダイナミックに制御することでコントラストを向上している。