ソフトバンクモバイルは2006年10月30日,携帯電話番号ポータビリティ(MNP)の導入に伴うシステム障害に関する説明会を開催した。会見には,同社 代表執行役 社長兼CEOの孫正義氏と,同社 専務執行役 情報システム・CS統括本部長 兼 カスタマーサービス本部長の阿多親市氏が出席し,システム障害の原因と対策,MNPの反響,新料金プランなどについて説明した。

●原因●

 MNP導入後,最初の週末となる10月28日には各種の申し込みが集中した。この申し込みには,MNP関連の処理だけでなく,新規契約,料金プラン変更,新料金プランなども含まれる。

 携帯電話事業者3社間のMNP処理には,他社からのユーザー情報照会に対して120秒以内に応答するというルールがとり決められている。この際,ソフトバンクモバイルの業務システムが過剰な負荷状態となってしまったことから,この120秒ルールが守れなくなったのだという。回答を受け取れなかった相手方システムが照会を繰り返すことで,システムが輻輳状態に陥ってしまった。
翌29日には,前日の「積み残し」処理が早朝から大量に発生したことから,再度業務を停止せざるを得なくなってしまったのだという。

●対策●

 今回のトラブル対策として,他事業者とユーザー情報をやりとりするMNPシステムと,同社の業務システムを完全に切り離すことにした。これにより業務システムからMNPシステムへの影響をなくした。

 さらに11月5日までのピーク時間帯(11~13時,17時~19時)はMNP処理を優先する,11月1~5日はMNPと新規顧客だけを受け付けるといった業務の優先付けを行う。この優先処理で機種変更の機会を逃してしまうユーザーには,キャンペーン割引の機会損失分として500円分のポイントを付与することにした。

●MNPの反響●

 MNPの反響については,現時点では数字を押さえていないと説明した。ただし他社の状況からは,少なくとも当初数日間におけるソフトバンクモバイルの苦戦がうかがえる。

 KDDIは,10月24~29日までの6日間にMNPを利用した転入が10万1200件,他社への転出が2万600件,差し引き8万600件増加したと発表している。NTTドコモは10月29日の時点で転入よりも転出が約6万多かったとしており,ここからソフトバンクモバイルは29日時点では約2万減ったと推測される。この推測に対して孫氏は「当社が申し込みを開始したのは26日から」「本来の力ではない」「1カ月くらいみてみないと分からない」など強気の姿勢をみせた。

●料金プランの変更●

 今回の発表では,「自社ユーザー間の通話料0円」をうたうゴールドプランについて,「他社のユーザーに対する通話料金が高い」との指摘を受けて値下げすることを発表した。他社の料金に倣い「30秒当たり20円」とする。

 さらに,従来は2年間だけだった「新スーパーボーナス」の適用期間について「1年」「1年半」も追加することも発表した。新スーパーボーナスは,端末料金の割賦分をユーザーの基本料から差し引くという制度。ソフトバンクモバイルが割賦分を負担する代わりに,ユーザーを長期的に引き止めるねらいがある。